アカデミー賞獲った女性が語る「日本映画の盲点」 日本の若い人たちはもっと貪欲に生きるべきだ
2つ目は、時局の社会、政治問題を土台にした映画製作を心掛けたことでした。それは、オスカー(アメリカ・アカデミー賞)や国際映画祭受賞作の必須条件にもなっているからです。
いきなりプロデューサーになったのではなく、キャリアのスタートから10数年はディストリビューターをやり、観客の嗜好を熟知していたことも大きかったです。最初からプロデューサーになっていたら頭だけで考える映画製作をしていたかもしれません。
また、男性ばかりの映画業界で、女性であることは、ディスアドバンテージだったかもしれませんが、それをアドバンテージにしようとする姿勢も大切でした。むしろ、私は女性であったことが功を奏したのかもしれません。
というのも、日本人の出資者から見れば、私は海外の映画製作業界をうまく泳いでおり、裏切らない、信用できるパートナーになりやすいと思われていました。一方、外国人から見れば、「大和なでしこにはタフな交渉はできないだろう」との思惑があり、やはり国際共同製作のパートナーになりやすい存在と思われていたからです。
社会をよく見てほしい
――映画作りを志すならば、日本社会だけではなく、世界の政治、社会情勢を勉強しなければならないとのことでした。
吉崎:社会をよく見てほしいですね。あらゆる仕事がそうだと思いますが、社会に対する視野や知識がないと仕事はできません。演出方法や撮影技術などのテクニックだけを身に付けてもいい映画は作れません。何に一番興味があるのか、何を一番描きたいのか、それをよく考えてほしいです。
――日本の大作映画はヒットしたマンガや小説などの原作ものが中心になり、多様性を欠いているのではないかとの声も上がっています。
吉崎:とにかく当たりそうな脚本に投資をしていく。その流れはテレビ局が映画に投資するようになってから出てきたように思います。
一方で、映画の製作会社は当たらないものにお金は出せません。製作委員会方式には批判もありますが、出資する大手の映画製作会社は脚本を読めば当たるか当たらないかがわかります。そういう意味では彼らはプロなんです。
確かに、映画の多様性を維持するために助成金のサポートなどを充実させることは必要です。しかし、それ以上に、投資家が納得できる脚本を作ることが、やはり大切ではないでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら