世界の海を知る男が故郷・鹿児島で始めた新事業 安全な観光船の背景に漁師としての豊富な経験

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
 
宿の裏手にある岸壁。ここからクルーズ船は出発する(著者撮影) 

観光グラスボートは、その名の通り船底がガラスになっており、船内から海中の様子が観察できる。日中の「海中探検コース」と日没から21:30頃までの「ナイトクルーズ」があり、日中は透明度の高い長島の海とテーブルサンゴや色鮮やかな魚たちが見られ、夜は輝く夜光虫を見ることができる。 

「ナイトクルーズ」は暗い海の中を進むため、このあたりの地形を熟知している岩﨑さんの知識と技術あってこそ成り立っているツアーだ。冒頭で夜光虫は物理的な刺激を受けて光ることを説明したが、ボートが海を進むことによって船底が夜光虫に当たり、その刺激によって発光するのだ。船のスピードを速めると夜光虫はより刺激を受けて輝きを増す。

怪獣岩(撮影:岩﨑明) 

日中の「海中探検コース」では、海の中だけでなく船からの景色も楽しめる。このエリアは雲仙天草国立公園で、島々が連なる多島景観やダイナミックな海岸線が見られる。約300万年前の大噴火から成る凝灰岩は風化によって典型的なリアス海岸になっており、まるで怪獣が口を開いているような“怪獣岩”や宝物伝説が残る洞窟が多く存在する。 

料金は「海中探検コース」「ナイトクルーズ」どちらも大人1800円、小人(12歳以下)900円で、1人からでも受け付けてくれる。天候や海の状況、年2回のドックで休みになることもあるが、基本的に通年で運航。県内だけでなく関西や関東からの予約も入る。新幹線の停車駅・出水駅から直通のシャトルバスも出ているため、車がなくてもアクセスしやすい環境だ。 

岩﨑さんが案内する海の世界は驚きと楽しさに満ち溢れている。それは、子どもの頃からずっと海と関わり続けている岩﨑さんの経験や思いがあるからだ。 

戦後の漁村育ち 

網元の家に育った岩﨑さん。子ども時代は裕福ではなかったが、魚もよく獲れ、乗り子には分け前を百円札の束で渡していた父の姿を覚えている。当時は貴重な現金収入が得られる場で、若手が働きに来ていた。しかし船や網の購入・メンテナンス等出ていく金額も大きかった。当時は半農半漁で、父も祖父も365日、海でも陸でも仕事の毎日だった。

次ページ小さな離島から、遠い海の向こうの世界に憧れて
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事