女性を次々と暴行した「ゲスの極みCEO」の末路 SNSでは道徳的発言で多くのフォロワーを獲得

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このようにして獲得したネット上の名声によって、プライスが私生活で虐待を繰り返し、会社で敵対的な態度をとれるようになっていたことが、50人以上への取材や各種文書、捜査資料から明らかとなった。

プライスは自身の知名度を利用し、身体的にも精神的にも被害を受けたと語る女性たちをネット上で追いかけ回した。プライスから受けた略奪的行為についてニューヨーク・タイムズに語った十数名を超える女性の1人が、マージスだ。

「ソーシャルメディアのおかげで、彼はストーリーをコントロールすることができている」。プライスの会社で約7年間マーケティングを担当したライアン・パークルはそう語った。

プライス、CEO
一度は表舞台から姿を消したにもかかわらず、"復活”したプライス(写真:The New York Times)

プライスはニューヨーク・タイムズに対する声明で「誰かを身体的・性的に虐待したことなどない」とし、「この記事にある、女性に対する不適切行為の疑いに関する記述は事実に反している」と述べた。

さらにプライスは、自身を有害な上司として描いた記述は不正確だと付け加えた。「グラビティを卓越した職場にすることは私にとっての最優先事項であり、私はその目標を達成しつつあると信じている」と、プライスは述べた。

ウソまみれの売名行為

私が初めてプライスに会ったのは2015年秋。プライスと給与引き上げのストーリーがあらゆる場所で話題をさらった後のことだ。クレジットカード支払い処理業務を手がけるグラビティは、年間利益が数百万ドル程度という、取り立てて目立たない企業だったにもかかわらず、入社希望者と顧客が大量に流れ込むようになっていた。

格差拡大の時代にプライスが放つ言葉はカリスマ性を持ったが、そのストーリーにはウソがあった。プライスはメディアに対し、給与引き上げを発表した後、グラビティの共同オーナーだった兄のルーカス・プライスから訴えられたと語り、これは利益が減ることに対する兄の報復であったとほのめかした。

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