炭素繊維3位の三菱ケミカル、「拡大策」の行方 BMW、エアバスの採用足掛かりに工場新設
航空機向けでは、2015年2月5日にエアバス社の 新型機「A320neo」用の新型エンジンのファン構造部材に採用されたことを発表した。こうした民間航空機用エンジンの構造部材に炭素繊維が使われるのは世界初のことだ。
東レがボーイング社と1兆円の契約を獲得するなど、航空機向けは高付加価値製品の強みを発揮しやすい。エアバス向けは帝人が実績を積んできたが、今後は、三菱レイヨンもエンジン部品への採用を武器に適用拡大を図っていく構えだ。
工場建設が進めば帝人を逆転
炭素繊維事業の指揮を執ってきた三菱レイヨンの越智仁社長は、今年2015年4月に三菱ケミカルホールディングスの次期社長に就任する予定で、炭素繊維事業の拡大には人一倍思い入れが強い。
炭素繊維の世界シェア(生産能力ベース)は東レが35%程度と断トツで、帝人が13%、三菱レイヨンは10%程度と3番手に位置する。だが、北米の新工場建設が計画どおり進めば、2020年時点で、生産能力は1.6万トンに達し、帝人の1.4万トンを上回ることになる。
三菱ケミカルは相次ぐ買収で売上高4兆円規模に拡大。世界でも有数の規模を誇る総合化学メーカーに成長しているが、依然として汎用品中心に石油化学部門が需給の悪化もあり、利益率が低い。成長事業と位置付けた電池材料の赤字も続いている。
このため、今2015年3月期予想ROEも5%台にとどまる見通しで、時価総額も1兆円を目前に足踏みが続いている。化学業界では、三菱、住友、三井を合わせても信越化学工業の時価総額に届かないと揶揄される市場の評価に甘んじているのだ。売上高が約半分の東レにも時価総額で1.7倍程度の差を空けられている。
そんな中で、採算も良く成長が期待できる炭素繊維は、最も投資優先度が高い事業といえる。航空機向けは最大手のボーイング向けを東レに2023年まで押えられてしまっているが、自動車は最大の攻略先となる。検討中の新工場も車載向けが中心となる予定で、ここで三菱の存在感は高まりそうだ。
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