10月21日、防衛省の報道官の記者会見で、武田博史報道官は筆者の質問に答える形で、住友重機械工業が製造している機関銃3種類を本年度(2014年度)は調達しておらず、来年度予算においても調達しないと述べた。防衛調達においてこれは極めて異例なことだ。
性能や耐久性などのデータを改ざん
そもそも、この機銃は大きな問題を抱えている。昨年、住友重機が防衛省に納めていた機関銃(M2・12.7mm機銃、74式7.62mm機銃、MINIMI5.56mm機銃)の性能や耐久性などのデータを改ざんし、防衛省が定める発射速度や目標命中率などの基準を満たさないまま納入していたことが判明。これらは主に陸自で使用されているが、海空自でも使用されている。
もし隊員が実戦でこれらの機銃を使った際に不具合が発生すれば、多くの死傷者が出る。自衛隊が戦場で満足に戦えなければ、一般市民の犠牲もそれだけ増えることが考えられる。それだけ深刻な問題であり、とても看過できるような不正ではない。
なぜ、こうしたデータ改ざんが行われたのかといえば、住友重機の側に、それが問題だという意識がなかったからだろう。天下りを受け入ておけば、必ず防衛省は製品を買ってくれるうえ、クレームもない。自分たちが国家の安全保障を担っているという責任感が欠けているとしかいいようがない。住友重機はこの件で現場に対する処分や一部役員の減給などは行ったが、経営陣が引責辞任することもなかった。
住友重機のこの件に関する報告書、「防衛装備品の納入に関する不適切な処理の判明について」は「本件に関わる業績への影響は軽微です」と締めくくられている。これが同社のこの事件に対する問題意識を表しているような気がする。
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