現状では、仕事の繁閑の差が激しい。小銃や迫撃砲などを製造している豊和工業の悩みは、さらに仕事が減ることだ。120ミリ迫撃砲の調達数は今後減っていくし、89式小銃も陸自分の調達がおおむね完了し、後は空海自向けの調達が残っているだけだ。同社の防衛省向けの売り上げは大きく下がることが予想される。
さらに、これまでライセンス生産してきた84ミリ無反動砲(カール・グスタフM2)も、厳しい局面にある。同砲は、スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクス社の製品を豊和工業がライセンス生産してきたが、新型のM3への更新が2012年から開始されており、当面は輸入対応だ。このまま輸入が続けば、豊和工業の売り上げへの影響は大きい。
しかし、なぜ防衛省は後継機種にM3を選んだのだろうか。今年になって、サーブ社はさらに軽量のM4を発表した。筆者はサーブ関係者から、5~6年前にはM4を開発中との話を聞いており、陸幕がこの話を知らなかったとは思えない。
最新のM4を調達するのが筋
M4の重量は7㎏未満。およそ10㎏のM3より3.4㎏ほど軽い(現用のM2の重量は16.1㎏)。全長は950ミリで、1065ミリのM3よりも115ミリ短い。また安全装置が追加されたので、弾薬を装填したたま安全に携行することが可能である。性能には歴然とした差がある。M4は2016年からデリバリーされる予定だ。M2は現在も生産されており、その後継を選ぶのであれば、M4がリリースされたあとM3と比較してから、でも遅くはなかったはずだ。
これは下衆の勘ぐりかも知れないが、M3ならばなんとか今後とも豊和工業でもライセンス生産が可能だ。現用のM2も昭和54(1979)年度からの導入当時は輸入で、昭和59(1984)年度から豊和工業のライセンス生産に切り替わっている。しかし、M4はチタン合金や炭素繊維などが多用されており、豊和工業では生産できない。生産するとしても多大な設備投資が必要になる。ゆえに、豊和工業にライセンス生産させるために、あえて旧式化したM3の導入を決定したのではないか。
岩田清文陸上幕僚長は11月6日の定例会見で筆者の質問に答える形で、将来M4に調達を切り替える可能性が残っていることを示唆したが、今後この件の行方を注視しなければならない。
こうした調達のゆがみをなくすためにも、国内の小火器メーカーは統合すべきだ。そうしなければ10年後にはビジネス自体が存在しなくなっているだろう。上場企業である各メーカーの経営陣が、それぞれ自問してほしい。出てくる回答は自ずと決まってくるのではないだろうか。
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