問題のあった3種類の機銃のうち、12.7ミリ機銃とMINIMIはベルギーのFN社のライセンス品である。仮に住友重機の製品に問題があるのであれば、FN社、またはFN社のライセンス品を生産している他の企業から調達すればいい。FN社から購入すれば、調達単価は住友重機製の3分の1程度で済むはずだ。
住友重機が生産する機銃に固有の問題があるのは、米軍が同じく使用している12.7ミリ機銃やMINIMIなど較べて明らかだーー。昨年のスキャンダルが発覚する以前から、現場の多くの隊員たちが、このように証言している。恐らく、住友重機にはFN社のオリジナルと同等の信頼性がある製品を製造する能力がないのではないか。防衛省はそのような不具合があることを等閑視し続けてきた疑いもある。
機銃の技術は第二次世界大戦でおおむね完成している。だが信頼性の高い機銃を生産できる企業は世界でも少ないのが現実だ。恐らくは明らかにされていない深刻な問題があるのだろう。
89式小銃の弾倉を使用すると暴発
防衛省は公表していないが、MINIMIに別の問題もある。MINIMIは基本的にはベルト給弾で射撃を行うが、89式小銃などの弾倉を使用することも可能だ。だが現状89式小銃の弾倉を使用すると暴発が起こるため89式小銃の弾倉をMINIMIで使用することは禁止されている。
一方、89式小銃の弾倉と互換性がある米軍のM4カービンの弾倉は使用できる。これはMINIMIの側に問題があるのか、89式小銃の弾倉の側に問題があるのかは不明だ。またMINIMIの連射性にも問題があるという。これは筆者が複数の現場の隊員に調査したことであり、その中には小火器のスペシャリストも含まれている。
加えて言えば、自衛隊の小火器は、性能の割に価格が極めて高い。他国の3~4倍は当たり前で、89式小銃に至っては8倍程度もする。
こうした高値がまかり通るのは、我が国では輸出ができず自衛隊、警察などしか顧客がないにもかかわらず、拳銃、サブマシンガンはミネベア、小銃、迫撃砲などは豊和工業、機銃は住友重機、機関砲から火砲は日本製鋼所が担当するという棲み分けがなされており、競争が無いからだ。各企業がそれぞれ製品を少数ずつ生産しているから調達コストが高くなる。調達コストが高いために単年度の調達数が少なくなり調達期間が伸びてしまう、という悪循環が起きている。
たとえば、64式小銃の後継として導入された89式小銃は導入から四半世紀たっても更新が終わっていない。これは別の理由もある。更新が早く終わるとメーカーの仕事が無くなってしまうのだ。そこには、調達側と企業の間の緊張関係、企業間における健全な競争というものが、まったく存在しない。
外国では例えば南アフリカ、トルコ、ポーランド、チェコなど国内市場の小さな国々では拳銃、火砲などを一貫生産している企業数は少ない。我が国でも火器メーカーを統合すべきだろう。そうすれば各銃器の調達期間を区切って生産できる。例えば7年間は小銃を生産し、ラインを変更して次の5年間では機銃を生産する、という具合にすれば劇的に生産コストが下がるはずだ。
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