この秋、日本の食卓を襲う「食料インフレ」の猛威 「からあげクン」36年で初値上げさせた根本原因

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日本がコメ以外の主要穀物を輸入に依存しているのは事実だが、輸入先を見ると政情が安定しているアメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジルの上位4カ国合計で供給カロリーの47%を賄う。国産と合わせると食料供給の85%を占める。

ロシア産やウクライナ産の穀物は主に北アフリカや中東に輸出されるため、ウクライナ危機の直接的な影響は日本にはない。食料の多くを輸入に頼る日本は、価格面でつねに複合的なリスクにさらされるが、一部の国で懸念されているような主要穀物の輸入途絶リスクは現状では低いといえる。

一方、資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は、「2007~2008年の食料危機は主に新興国の需要急増によるものだったが、今回は複数の供給制約が加わった。食料価格は今後、ますます不安定化していくだろう」と警鐘を鳴らす。

今回の食料危機の発端となったウクライナ戦争には終結の兆しが見えず、さらに年々被害が深刻化する気候変動やコロナ禍のサプライチェーン途絶、家畜の伝染病などのイベントリスクは農作物の生産・供給に大きな影響を及ぼす。

中国勢と価格合戦

食料価格高騰の“現場”を目の当たりにしているのが総合商社だ。丸紅穀物事業部の中澤真之部長代理は、「コロナ禍以降、中国の穀物需要は落ち着いたものの、それ以前の勢いはすごかった。中国勢と価格合戦になっていた」と話す。

ここ数年、中国での騰勢を背景にトウモロコシを主原料とした飼料の価格が急騰し、国内畜産農家の収益を圧迫している。中国などからの輸入に依存する肥料の価格高騰も深刻だ。

国際価格の変動に左右されにくい基盤をつくるためには、食料の国産化が急務。だが、国内農業は高齢化や耕作放棄など課題が山積み。自給できているコメの生産は半世紀続く減反政策で縮小し、国が奨励する小麦や大豆の生産はなかなか広がらない。日本の食料安全保障の柱である食料自給率は一向に上がる気配がない。

国内の生産基盤を立て直せなければ、日本を襲う「食料危機」はさらに深刻になるだろう。今こそ日本の食と農業を見つめ直すときが来ている。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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