政府は食料インフレの抑え込みに躍起だ。8月15日に開いた「物価・賃金・生活総合対策本部」で、岸田文雄首相は年2回(4月と10月)改定される小麦の政府売り渡し価格を10月以降も据え置くよう指示を出した。
小麦はパンや麺類、菓子など用途が幅広く、価格改定が与える影響範囲は大きい。昨年10月の改定では19%値上がり(昨年4月比)、今年4月の改定ではそこから17.3%も値上がりした。
ウクライナ危機後の相場暴騰や円安進行を反映する今年10月の改定では、「さらに二十数%のプラスになるのは必至」(製粉関係者)とみられていた。小麦の政府売り渡し価格が据え置かれるのは2008年10月以来のこと。当時は輸入小麦の政府売買差益(マークアップ)を圧縮し、平均23%の値上がりを10%に抑えた。今回も同様の緊急措置となる見通しだ。
6割超を輸入に依存
終わりの見えない食料インフレは、過去に類を見ない「食料危機」となるのか。値上げラッシュの背景にあるのは、大半の食料を海外からの輸入に依存する日本の調達構造の現実だ。
今年8月に農林水産省が発表した2021年度の食料自給率は38%(カロリーベース、概算値)。食料自給率は、日本全体で供給された食料に対する国内生産の割合を示す指標で、裏返していえば、日本は海外産の農林水産物・食品に6割超を頼っていることになる。
諸外国のカロリーベースの食料自給率を見ると、穀物輸出国であるカナダ(233%)、オーストラリア(169%)、アメリカ(121%)が100%を超え、ドイツ(84%)、イギリス(70%)なども日本を大きく上回る。
ただ、農水省が毎年発表する食料自給率は日本の食料事情の一側面を示した指標にすぎない。戦後、ほぼ一貫して食料自給率が下がってきたのは、畜産物や油脂類などの消費が増え、分母に当たる供給量が増えたため。一言で言えば、食の「洋風化」によるところが大きい。