水道料金を「4割値上げ」地方自治体の悲鳴の声 コンセッションにたどり着けない自治体の苦悩

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宮城県で全国初の試みとなる、上下水道、工業用水道を民間に委ねるコンセッションがスタートした。一方でほかの地方自治体からは、過剰設備と利用者減少に苦しむ声が聞こえてきた。

人口減少が続く、新潟県十日町市の海老地区。同市は水道料金の大幅値上げに踏み切った(記者撮影)

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2022年4月に宮城県で、上下水道、工業用水道の運営を一括して民間委託する、全国初の試みがスタートした。施設は県が保有したまま9つの水事業を一括運営委託する官民連携のコンセッション方式で、「みやぎ型管理運営方式」と呼ばれる。
水事業大手のメタウォーターやヴェオリア・ジェネッツなど10社でつくるSPC(特別目的会社)が20年間運営し、薬品の共通化などで約337億円のコスト削減を見込む。だが民間が入ることで水道料金の値上げにつながる懸念や、水質の安全性の担保など、地元住民からは不安の声も出てきている。
それでも宮城県が上水道を含むコンセッションに踏み切ったのは、施設の老朽化で更新費用がかさむ一方、人口減で水道料収入が減っていく状況を放置できないからだ。施設を管理する人員の高齢化、人手不足の問題もある。
宮城県は当面水道料金の値上げをしない方針だ。その一方、「宮城県の事業には、民間が参入できる収益性と規模がある。大多数の自治体では、民間が入るメリットがなく、コンセッションなど導入できない」(ある自治体関係者)というのが現実で、水道料金の値上げに踏み切る地方自治体も出てきている。過疎と過剰設備に苦しむ自治体を取材した。

「田んぼの手入れのため、ここに来るのは昼間の2、3時間だけ。水は機械や車を洗うだけで、そんなに使わない。普段は(遠方の)息子の家で暮らしている」

新潟県十日町市海老(かいろう)地区に住む、中嶋保夫さん(86)はそう話す。

十日町市の市街地から車で30分ほどの山間の集落には、5世帯9人が住んでいる。かつては50世帯100人ほどが住み、小学校も置かれていた。いまでは中嶋さんのように、日中の数時間しか滞在しない人も多く、集落は静まりかえっている。

それでも市は、海老地区の井戸や濾過器などの水道設備を維持し、24時間水が流れるようにしなければならない。

過剰な水道設備がそのまま残っている

十日町市では、市街地2地区の上水道事業のほか、42地区で簡易水道事業(給水人口5000人以下の水道)を営んでいる。井戸で250~500メートルに及ぶ地下深くから水をくみ上げ、鉄分やマンガン、ヒ素などを濾過して給水している。

十日町市上下水道局の丸山洋局長は、「十日町市の水道は山間の地域に分散しているうえ、水質が悪く、それぞれの地域ごとに水質にあった薬液や機械を使う必要がある。運営効率が非常に悪い」と話す。

同市の人口はピーク時に10万人を超え、給水のための管路の総延長は750キロメートルに及ぶ。いまでは人口が4万9000人あまりまで減ったが、過剰な水道設備の多くがそのまま残っている。

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