宮城県で全国初の試みとなる、上下水道、工業用水道を民間に委ねるコンセッションがスタートした。一方でほかの地方自治体からは、過剰設備と利用者減少に苦しむ声が聞こえてきた。
「田んぼの手入れのため、ここに来るのは昼間の2、3時間だけ。水は機械や車を洗うだけで、そんなに使わない。普段は(遠方の)息子の家で暮らしている」
新潟県十日町市海老(かいろう)地区に住む、中嶋保夫さん(86)はそう話す。
十日町市の市街地から車で30分ほどの山間の集落には、5世帯9人が住んでいる。かつては50世帯100人ほどが住み、小学校も置かれていた。いまでは中嶋さんのように、日中の数時間しか滞在しない人も多く、集落は静まりかえっている。
それでも市は、海老地区の井戸や濾過器などの水道設備を維持し、24時間水が流れるようにしなければならない。
過剰な水道設備がそのまま残っている
十日町市では、市街地2地区の上水道事業のほか、42地区で簡易水道事業(給水人口5000人以下の水道)を営んでいる。井戸で250~500メートルに及ぶ地下深くから水をくみ上げ、鉄分やマンガン、ヒ素などを濾過して給水している。
十日町市上下水道局の丸山洋局長は、「十日町市の水道は山間の地域に分散しているうえ、水質が悪く、それぞれの地域ごとに水質にあった薬液や機械を使う必要がある。運営効率が非常に悪い」と話す。
同市の人口はピーク時に10万人を超え、給水のための管路の総延長は750キロメートルに及ぶ。いまでは人口が4万9000人あまりまで減ったが、過剰な水道設備の多くがそのまま残っている。
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