岸田首相「逆風4点セット」の窮地でも強気貫く事情 政権の命運を決める安倍氏の国葬まで1カ月

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さらに、岸田首相自らが招いたとされるのが、安倍氏の「国葬」儀の即断だ。「多くの国民も支持、歓迎するはず」との思い込みは「完全な判断ミス」(自民長老)とみる向きが多い。もちろん、「旧統一教会問題が絡んだ結果」(自民執行部)ではあるが、「性急すぎた」(閣僚経験者)とのそしりは免れない。

ここにきて、国葬反対の声は国民的な広がりみせ、8月19日夜の国会を取り巻いた抗議集会では、主催者発表で約1200人の市民が「国葬反対」などと書かれたプラカードを手にシュプレヒコールを繰り返した。安倍政権下の2015年9月の新安保法制強行採決時の国会周辺デモをほうふつとさせる光景だった。

政府は「9・27国葬」に向け、招待客を6400人程度に絞り込むなど、具体的実施計画の取りまとめを急いでいる。1967年の故吉田茂元首相の国葬と同規模が目安とされ、近く必要な経費を閣議決定する段取りだが、巨額な「全額国費負担」が国民の批判を加速させる可能性は少なくない。

「千載一遇のチャンス」と意気込む主要野党

そんな中、立憲民主党など野党5党は18日、憲法53条に基づき、早急に臨時国会を召集するよう岸田首相に求める要求書を細田博之衆院議長に提出した。旧統一教会問題を国会で追及することで、政権を揺さぶる戦略だ。

岸田政権発足以来、「聞く力」を売り物にした“岸田沼”と呼ばれるしたたかな答弁術に対し、攻め手を見つけられなかった野党は、「千載一遇のチャンス」(共産党)と意気込む。ただ、松野博一官房長官は23日の記者会見で、「与党ともよく相談したい。総合的な判断のもとに行われるものだ」と早期召集には慎重姿勢を示した。

9月以降の政治日程をみると、節目ごとに岸田首相の国連総会出席など重要外交日程などが設定されており、政府・与党幹部は「国葬前の召集は困難。最速でも10月3日から」(自民国対)と口をそろえる。

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