宗教2世の苦悩を「毒親問題」で片づけていいのか 児童虐待、伝統宗教との共通点と違いは?

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――今注目が集まっているのは、主に新宗教の2世です。仏教やキリスト教などの伝統宗教の2世とは、どのような違いがあるのでしょうか。

「新宗教だけの問題でしょう?」としない姿勢が必要です。伝統宗教であっても、幼少期から寺社を継ぐことが決まっていたりするのは、進路選択が狭められているとも言えます。教団によっては、そのために暴力を伴うような厳しい修行や「下積み」などに耐えなければならないかもしれません。その強制性・規定性という点では新宗教の2世の問題とまったく別ではありません。

キリスト教にもいろいろありますが、教会やその聖職者によっては苦しさ、生きづらさにつながるような経験を幼少期からしているクリスチャン2世もいます。切り離さないことです。ただ、伝統宗教と大きく異なる点は、新宗教は社会の側の偏見が強いことから、周囲の理解を得られにくく孤立しやすいことでしょう。「新宗教の家に生まれ育った」というだけで持つ問題の重みがあります。むしろこれは社会の側の課題でしょう。

また「宗教」だけの問題にしない視点も必要です。スピリチュアルな思想と実践に関わる親(医療拒否などのケースも)、「陰謀論」にハマる親、レイシズムにハマる親などの場合です。組織性などの面で新宗教と違いはありますが、問題の構図は重なっています。その意味では、特定の「宗教」に入っていないとしても、誰もが出会いうる問題だという理解が必要ではないでしょうか。

社会的な支援は遅れている

――ここまで2世が声を上げるようになり、教団側でも2世問題に対して対策をしようという動きはありますか。

たとえば旧統一教会の場合でも2世が5万人以上とかなりの割合を占めており、彼らが教団内に定着しなくなれば教団として立ち行かなくなるでしょう。掘り起こしと引き止めに躍起になっているようです。多くの問題を重ねてきた教団において、はたしてそれがうまくいくのでしょうか。

新宗教一般でも、こうした2世への「信仰継承」が喫緊の課題となっています。そのこと自体は自然なことです。その過程で、これまで述べてきたような悩みや苦しみがどう扱われるかが問われています。

――こうした2世当事者への社会的支援はあるのでしょうか。経済力が乏しく、精神的にも不安定な場合も多い2世が家庭から自立するにはサポートが必要です。

具体的な支援体制の整備は遅れています。自立支援、社会保障、生活保護申請など社会福祉分野からの支援が必須ですが、2世の自立支援に集中して取り組む社会福祉士は日本でも1人、2人しか思いあたらないレベルです。社会福祉士は多くおられるのですから、そのなかで理解と取り組みが広まってほしいです。

また、公的支援や相談のための窓口の整備や、問題理解の進展も遅れています。行政窓口などに行っても「宗教のことはノータッチ」「家庭内の問題だから家族とよく相談して」などと依然として遠ざけられてしまうのです。このあたりが大きな課題です。

――生活保護を申請しても、まず家族に相談するように言われることがあるようですね。その家族が頼れないという状況が理解されていません。

社会全体でのこの問題への理解推進が必要です。周囲が2世の置かれている状況を理解することで救われる面もあります。例えば、2世にとって学校生活が窮屈なことがあります。疎外感が強く、いじめにつながることもあります。そんななかで理解や配慮がある教員や友人の存在はどれだけ心強いでしょう。

この点は学校空間だけに限られません。教団外社会もそんなに悪くない、捨てたものではないと「思わせる」こと。これは「当事者」ではないわれわれにもできることではないでしょうか。

【東洋経済では宗教2世に関するアンケートを実施しています】

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