宗教2世の苦悩を「毒親問題」で片づけていいのか 児童虐待、伝統宗教との共通点と違いは?

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日本の新宗教にタブーや禁止行為はそれほど多くはないのですが、それが多い教団・教えの場合だと、やはり自由の制限が強まります。窮屈な学校生活を送ることになったり「教団外他者」との自由な交友関係が禁止され、恋愛や性的なものもコントロールされたりします。

献金によって経済的な余裕がなく進学を断念せざるをえないことや、教団設立の学校への進学が強く勧められること、布教に専念するほうが美徳とされるために進学や職業選択などの幅が狭まることもあります。これらによって人間関係が閉じられる傾向もあります。

つかだ・ほたか/1980年、長野市生まれ。上越教育大学准教授。専門は宗教社会学。新宗 教運動、宗教と政治、カルト問題、宗教教育などの研究に取り組む。東京学芸大学教育学 部を経て、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程を修了。著書に『宗教と 政治の転轍点』・『徹底検証 日本の右傾化』(編著)

明確な「虐待」と言えるものとしては、ムチで暴力を加える身体的な虐待もあれば、親が信仰に入れ込むことで育児放棄(ネグレクト)が起こることもあります。教団への度を越えた献金で家計が困窮に陥り、子どもの将来に影響が及ぶような経済的な虐待もあります。

教団をやめたり、批判したりすると「地獄行きが決定だよ」「天国に行けないよ」「大きな罰が下るよ」などと幼少期から教えこまれたことで精神と行動を縛ることは、一種の「霊的虐待」(スピリチュアル・アビュース)にあたると捉えられます。このように、特に教団内と教団外社会とを鋭く切り離すような「隔離型」の教団では、2世問題は特に増幅されると見たほうがよいでしょう。これは脱会を望んだ際の難しさ、呪縛にもつながります。

新宗教とは、組織がしっかりした宗教のタイプですので、信者の日々の生活に組織の影響力が強く及びます。教団組織の中で教えに基づき「こうしたほうがいい」という模範的な信者像・家族像というものがあり、それにしたがって教化活動や信徒育成が行われていく。そこに重点を置くので、教団内の文化や考え方は強い同調圧力になり、模範的な信者家庭像を子どもたちに押し付けることにもなりかねません。

もちろん親には、自らの考えに基づいて子どもをしつけたり教育したりする権利、義務がある。しかし、それが度を越えたものになっていないか、子どもの発達段階に合ったものと言えるのか、子どもの信仰や生き方の選択の自由を侵害するものになっていないか、という観点が必要なのです。

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