2つ目がメディア環境の変化です。
これまでも2世で悩んでいる人はいましたが、なかなか表に見えませんでした。しかも、それぞれの教団内では2世の成功体験のみがあふれかえっています。悩みを抱えていたけど一生懸命活動をするようになったというような話が機関誌に載るなど模範例ばかり。悩み続けて活動しなくなった人や、脱会後も苦しんでいる人の話はなかなか共有されなかったのです。
こうした状況を変えたのがSNSです。ここ10年、特にツイッターでは匿名で自由につぶやいたり相互参照・拡散したり、当事者同士が緩やかにつながり共感できるようになりました。
教団内では、組織と家族とに束縛されていたような2世であっても、SNS上では一アカウントとして自由に発信でき、交流ができます。そして現在のように、SNSを介して自助グループのような形でお互いの体験を共有できることは、悩んでいる2世にとっては非常に大きいのです。
2010年代には2世の体験を描いたウェブコミック、コミックエッセイがSNS上で話題になることも目立ちました。そこから書籍になったものも複数あります。出版側もそうしたテーマが社会的関心を呼ぶものであることを理解したのでしょう。そのような変化が徐々に浸透していきました。
3つ目は家族関係と、それをめぐる問題に対する社会的認識の変化です。かつては「厳しいしつけ」として家庭内の問題とされてきたようなことが「児童虐待」として認識されるようになりました。
ここ数年、「毒親」や「親ガチャ」という言葉も浸透してきています。こうした社会の変化の中で「家族問題の宗教版」として注目されるようになっています。
①新宗教の2世が増加、数百万人に上る
②SNSで当事者同士が体験を共有
③家庭問題や児童虐待の社会的認知 ◇
示唆深いのは、ある2世の方が「〇〇の宗教の元で育った」とつぶやいてもSNSではほとんど広まらなかったのに「こんな『毒親』に育てられた」とつぶやくと、あっという間に拡散されたそうです。
家庭・親子間の虐待問題と共通点があるのは、ある意味、解決の方向も示唆していると思います。
「模範的な信者家庭像」を押し付ける
――「宗教2世」に対する虐待や自由の制限などにはどのような特徴があるでしょうか。
このあたりは教団によって色合いや現れ方が異なるので注意が必要です。
もっとも、幼少期から儀礼や布教、集会などにほぼ「強制で参加させられる」というのは比較的広範に見られることでしょう。