後述するが、音楽シーンがライブ中心のものになっている中、CDにしろ有料配信にしろ、ネットで無料公開にするにしろ、新曲をリリースしても聴かれないという問題が存在する。しかも、みんな、新曲を求めているのかと思ったりもする。いや、ファンとしては嬉しいものの、とはいえ、代表曲、懐かしい曲の方がずっと楽しいわけだ。ライブ中心の場合、それが加速されることは必然だろう。
「新曲」ではないが、「新音源」ではある「カバー曲」というものも増えた。個人的には、これは大好きで、解釈、演奏力を楽しむことができるし、そのアーティストのルーツを知ることもできるのだが、これもまた新曲の受難を物語っていないか。
もちろん、すべてのアーティストに新曲は不要だとは言わない。今、勢いにのっているアーティストや、好きなアーティストの新曲は楽しみだ。ベテランであっても、いまが一番旬じゃないかと思うような作品をつくるアーティストもいる。
ただ、バンドに創作意欲がない場合、ファンも新曲を望んでいない場合、さらに言えば、それがビジネスとして成立しない場合、「新曲」という、当たり前に存在すると思っていたアウトプットは、実は成立が困難なものになってしまうのである。
このように、気づけば音楽をめぐる前提は変化している。
音楽業界は音源→ライブ?
音楽市場の何が変化しているのか。ここにまとめてみよう。
非常にざっくり言うならば、
というような状況である。あくまで総論だ。まだまだ細かい変化もあるし、トレンドについて語りたいことも沢山あるが、ざっくり言うとこうだ。
より詳しくデータを見てみよう。一般社団法人日本レコード協会と一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(ACPC)のデータを元に論じることにしよう。なお、2014年度分のデータはまだ公表前のものも多いので、主に2013年度のものを基に論じる。推移などについては、元データを見ていただきたい。
音楽ビジネスに関する本は多数出ているが、2010年11月に出た『未来型サバイバル音楽論』(津田大介・牧村憲一 中公新書ラクレ)が、コンパクトにまとまっていてオススメだ。もう約5年前の本だが、ほぼこの本で総括され、予測されたように音楽シーンは進んできているように思う。
音源は1990年代後半をピークに減少トレンドである。「音楽ソフト(注)」の市場は生産金額ベースでは1998年がピークで6074億円となったが、その後、徐々に減り2013年度は2704億円と半減。出荷数量ベースでは1997年がピークとなっており4億8071万枚。2013年度は2億4770万枚と、やはり半減している。
(〈注〉1998年時点での音楽ソフトの定義は、音楽のディスク(レコード、CD)とテープの売り上げ、1999年から細かい区分が変わり、2002年から音楽ビデオの売り上げも含んで集計 なお、ネット配信は含まない)
有料音楽配信売上実績は2005年度から集計開始。2005年度2億6790万回(そう単位は回というものになっている)、342億円。2013年度は2億1643万回、417億円となっている。握手権をつけるいわゆるAKB商法や、CDには初回特典でDVDがつくなどのプロモーションがはやったこともあるのだろうが、この年だけでみると、対前年比で約2割減だった。
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