「卓上レモンサワーとホルモン」ときわ亭の正体 コロナ禍に店舗数をどうやって増やしたのか

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メニューの目新しさにエンターテインメント性で特徴を出してきた同チェーン。しかしさらに大衆性を獲得していくには、コスパの良さも重要だ。

同チェーンの客単価は3000円程度なので、焼肉店としては中くらいか少し安めというところだろう。牛カルビやハラミといったメニューは牛角などに比べて高めだが、ホルモンやアルコールの安さでバランスをとっている。

「激辛冷麺」(1089円)
8月1日〜31日には「本当に辛い激辛メニュー」4品を提供。2021年夏にも展開したキャンペーンで、「もっと辛くして欲しい」という声を受け、2022年では辛さの見直しを行った。写真は「激辛冷麺」(1089円)。今回の激辛メニューの中でもトップの辛さだそう。普通の辛い物好きだと完食は難しいかもしれない(撮影:尾形文繁)

焼肉チェーンではこの中間層が薄く、地域によっては焼肉店の選択肢が少ないため「国内に焼肉難民がいる」というのが藤田氏の推測するところだ。チェーンを広げていくことで、誰もが月に1回は焼肉店に行けるような状況をつくるのが目標だそうだ。

まずは都市部に拠点をつくり、ブランド認知を高めつつその周囲に展開して店舗を拡大していく。これには物流網を確保する意味もある。物流量が多いほどコストは下がり、安い価格で提供できる。

関西圏は「肉と言えば牛肉」の土地柄だが…

ここで余談だが、同チェーンは2021年3月に大阪に出店し、現在までに7店舗展開している。実は大阪での出店は全国での成功をはかる1つの試金石だった。というのも、関西圏は「肉と言えば牛肉」の土地柄で、豚ホルモンを使う仙台ホルモンがどう受け止められるか、未知数だったからだ。

ただ藤田氏はチェーン立ち上げの際に大阪の知人に試食してもらい、問題ないことを確認していたという。実際、前述のように大阪の梅田にある店舗が売り上げ上位に挙がるぐらい、豚ホルモンは大阪でも受け入れられたようだ。

GOSSO代表取締役の藤田建氏
チェーンを展開するGOSSO代表取締役の藤田建氏。2005年に創業したGOSSOは飲食店運営やプロデュースを事業とする企業。駅至近の立地かつエンターテインメント性のある飲食事業を得意とする(撮影:尾形文繁)

このように無事、大阪という関所を越えた同チェーン。2022年12月末までに100店舗達成を目指し、海を挟むため物流面で不利な北海道、沖縄にも拠点を広げていきたいという。

なお、全国627店舗(2019年6月時点)で店舗数トップの牛角は「食べ放題専門店」(15店舗)やフードコート専門の「牛角焼肉食堂」(14店舗)などを展開してきている。

食事需要に的を絞って伸びているのが「焼肉ライク」だ。ビジネスパーソンを中心に支持を得ており、ごはん、キムチ、スープがついた「ミックスカルビセット(100g)」が580円というコストパフォーマンスの良さも評価のポイントとなっている。2019年の23店舗から2022年は84店舗(7月末時点)へと増えてきた。

焼肉が身近な食となる中、焼肉需要の多様化に対応すべく、各社の競争が激化している。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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