やがてこの事件が明るみに出ると、世界の決済業界に衝撃が走った。詐欺師たちは中央銀行からの盗みを成功させ、信頼されていた国際決済ネットワークを悪用しただけでなく、通常は国家のみが使用する高度なマルウェアを使っていたのであった。
さらに悪いことに、かれらは明らかにコルレス銀行〔海外送金において中継地点となる銀行〕業務の専門知識──スウィフトの指図のフォーマットや、仲介銀行を経由して指図を送る方法を知っている人物──に通じていた。
世界中のメディアや科学捜査官がこの事件に注目する中、問題はバングラデシュだけにとどまらないはるかに大きなものであるということがすぐに明らかになった。ほどなくして、世界各地で事件が発生するようになったのだ。アメリカの国家安全保障局(NSA)の副長官が後に述べたように、あらゆるものが「国家が銀行強盗をおこなっている」ことを示唆していた。
今日にいたるまで、ラザルス・グループのメンバーは1人しか特定されていない──逮捕や裁判の可能性はなさそうである。
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Gottfried Leibbrandt
マッキンゼー・アンド・カンパニーの元パートナー。2012年から2019年まで、クロスボーダー決済ネットワーク、スウィフトのCEOを務めた。アムステルダム自由大学、マーストリヒト大学、スタンフォード大学ビジネススクールの学位を取得している。自称・決済オタク。ネットワークマニアでもある。
ナターシャ・デ・テラン
SWIFT社 元コーポレートアフェアーズ部門責任者
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Natasha de Terán
元ジャーナリストで、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、タイムズ紙、フィナンシャル・タイムズ紙、『マネー・ウィーク』などに寄稿してきた。スウィフトの元コーポレート・アフェアーズ責任者、カーネギー国際平和財団のノンレジデント・スカラーであり、英国支払システム規制庁および金融サービス消費者パネルの委員を務めている。金融についてわかりやすく伝えることの重要性をかたく信じている。