日本人がサンマを100円で買えない本当の理由 環境変化や中国漁船は不漁の主原因になるのか

拡大
縮小

 

(出所)農水省データより筆者作成

上のグラフをご覧下さい。マイワシとサンマの漁獲量推移のグラフです。1980年代のマイワシの漁獲量は、現在よりはるかに莫大であったことがわかります。

ところで、同時期のサンマも平均で20万トン前後と、昨年度(2021年)の約10倍と、はるかにたくさん獲れていたことがわかります。マイワシがサンマの回遊を妨げているとしたら、マイワシが大漁だった当時のサンマの漁獲量は、非常に少ないという理屈になりますが、全然そうではありません。

マイワシ以外に、マサバが多いからという説もありますが、これまた実際の漁獲をグラフにしてみると相関関係が見当たらないことがわかります。水産資源の減少を、「乱獲」という言葉を避けて環境要因に責任転嫁すると、上記のように矛盾が生じてしまいます。

外国漁船が先に獲ってしまう?

日本の排他的経済水域(EEZ)に回遊する前に、台湾や中国の漁船が公海でサンマを獲ってしまうというテレビ報道を見たことはないでしょうか?

もっともな説明のようではありますが、日本のサンマ船の漁場は、ほとんど公海上になっています。現場では、お互いの漁船が見えるような位置で、各国の漁船が入り乱れて操業しているのです。したがって、外国漁船が先に獲ってしまうのではなく、同じ漁場で獲りまくっているのです。しかしながら、サンマの来遊量、つまり資源量が少なすぎて獲れないというのが実態なのです。

サンマの漁獲量と魚価の推移(出所)水産白書

このままでは、サンマは高級魚の仲間入りです。サンマを冷凍したり、加工品を作っている北海道や東北をはじめ地元の水産業は、原料不足に直面していて大きな痛手です。上のグラフをご覧ください。水揚げが減って魚価が大幅に上がっているのがわかります。

次ページサンマ「獲り放題」の実態
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT