大手商社が「サーモン養殖」に本腰を入れる理由 陸上養殖に続々参入、普及のカギは価格競争力
近い将来、食卓には「海を知らない」サーモンが並んでいるかもしれない。
世界的に需要の増加が見込まれるサーモンの陸上養殖に大手総合商社が力を入れ始めている。丸紅は、日本水産と共同でデンマークのダニッシュ・サーモン(DS)社を2020年4月に買収した(金額は非公表)。
DS社が取り組んでいるのは、使用する水をろ過し、循環して使う「閉鎖循環式」と呼ばれる陸上養殖だ。DS社は年間およそ1000トンの陸上養殖サーモンをデンマークの養殖プラントから出荷する。これほどの規模を出荷する企業は世界でも数少ない。DS社は養殖設備を拡張し、2022年には生産量を2750トンにまで引き上げる計画だ。
環境負荷の少ないサーモン養殖
人口増加や先進国でのヘルシー志向の高まりなどによって、世界の水産物需要は年々拡大傾向にある。丸紅の中村一成・水産部長は「新型コロナウイルスが発生する前だが、世界の水産物需要は年率1.5%の伸びをみせており、特にサーモンの伸びは7%にものぼった」と語る。
サーモン養殖は他の魚種に比べて環境負荷が少ない。WWFジャパンの前川聡・海洋水産グループ長は「1キログラムのマグロを育てる場合は餌が10~15キログラム必要だが、サーモンは1~2キログラムの餌で育成できる」と説明する。水産物の中でもサーモンはヘルシー志向の人々の間で人気が高い。DHAなどを豊富に含んでおり、健康によいとされているためだ。
50年ほど前と比べると、世界の1人当たりの魚介消費量(年間)は9キログラムから20.5キログラムへ、約2倍に増加した。だが、1990年ごろから世界の漁獲量は年間およそ9000万トンのほぼ横ばいで推移しており、漁獲量をこれ以上増やすのには限界がある。
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