大手商社が「サーモン養殖」に本腰を入れる理由 陸上養殖に続々参入、普及のカギは価格競争力

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漁業生産の停滞とあわせて1990年ごろから急速に増えたのが養殖だ。今や漁業・養殖生産量の半分ほどを占める。増え続ける水産物需要には養殖で対応していくことになりそうだが、サーモンの海面養殖はそれほど簡単ではない。

サーモンの育成には摂氏12~15度程度の低水温が必須条件になる。仮に日本で海面養殖しようとすれば、夏場に水温が上がってしまうことがネックになる。そのため、サーモンの海面養殖は1年を通して水温の低い、ノルウェーやチリ、カナダ、スコットランドといった高緯度の国々で行われてきた。

注目を集める陸上養殖

海面養殖は適地に限りがあり、「波の立たない入り江で海水温14度前後という制約があるため、海面養殖によって生産量を大きく増やしていくことは難しい」(丸紅の中村水産部長)。しかも、餌の食べ残しや排泄物で海が汚染される環境汚染リスクもつきまとう。

そこで昨今注目を集めているのが、陸上プラントの中でサーモンを成育して養殖する陸上養殖だ。円形の水槽の中でサーモンを飼育する。人工海水をろ過し、循環させているのが特徴だ。そのため、海面養殖と違い、地理的制約もない。

DS社の場合、まずは受精卵を業者から購入して育てる。小さなサーモンと大きいサーモンを交ぜて育てると、餌の奪い合いに負けてしまうため、サーモンの成長ステージごとに分けて飼育する。病気にならないように気を配りつつ、水温や水質をきめ細かく管理する。

稚魚から3~4キログラムの出荷サイズとなるまで約2年かかる。海面養殖に比べて高コストになるのは否めず、今後はコストを抑えながら出荷量をいかに拡大するかがポイントになる。

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