くら寿司、天然魚ネタ投入は何がスゴいのか 新たに稼働した加工工場で狙う大勝負
「シャリカレー」や「シャリコーラ」など斬新なメニューを相次いで投入してきた回転すし2位の「くら寿司」が、今度は大胆な仕掛けに打って出た。
運営元のくらコーポレーションは10月13日、産地直送の珍しい魚をすしネタにする「天然魚プロジェクト」を本格的に展開すると発表した。シイラやサゴシ、ボラなど漁獲量が少なく、形が変わっているので調理しにくいなど通常は扱いにくい、多種多様な魚をすしネタにする、一風変わった試みだ。
総工費は約27億円!
1皿100円(税抜き)で、全国展開をにらみつつ当面は西日本の約200店舗を中心に展開する。「リスクはあるが、結果はやってみないとわからない」と、同社の田中邦彦社長は語る。
プロジェクト本格化に合わせ、総額27億円を投じ、大阪府貝塚市の4500坪の敷地に同社最大規模の新工場を建設、13日から稼働をさせた。1日最大10トンの天然魚を加工し、西日本の店舗へ供給する。
工場には本格的な鮮魚店「くら天然魚市場」も併設し、天然魚の販売も手掛ける。同社で初めて小売り業態である。「無添 くら寿司」の回転すし店舗も工場に併設した。オープンはともに18日を予定している。
「業界に流通革命を起こしたい」と田中社長が強調するように、このプロジェクトの肝は新しい流通経路を確保したことことにある。
全国に約370店舗を構えるくら寿司では、漁港ごとの個別契約では供給量を確保できないため、商社経由の仕入れに頼っている。全体のうち約6割を海外から調達しているが、その多くが商社経由。国内に関しても商社経由の仕入れは少なくない。
調達したマグロなどの魚は大阪府堺市や埼玉県、福岡県にある工場で、すしの大きさに切り分けるなどの加工をした後に全国店舗に配送する。いわゆるセントラルキッチン方式だ。工場からはAI(人工知能)を駆使して最適なルートや時間を導きだし、各地の配送業者によって全国に早期配送する。
この既存の仕組みでは、天然魚プロジェクトは遂行できなかった。実は、同社は5年前に、天然魚プロジェクトと似たコンセプトの「ご当地フェア」を実施したことがある。全国各地の魚貝を手頃な価格で提供する企画だったが、「見事に失敗した」(田中社長)という。
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