「音読」を甘く見る人が知らない驚きのメリット コミュニケーション能力や非認知力もアップ!?
黙読の習慣は比較的最近できた
明治初期の思想家、堺利彦の日記に、ある日父親が『南総里見八犬伝』を借りてきて、近所の子どもたちを集めて、朗々と読んでくれたというエピソードが出てきます。樋口一葉の日記にも、母親が本を読んでくれるのを聞くのが大好きだったという話があります。
新聞も、町の中にステーションがあり、そこに立った誰かが、みんなの前で読み聞かせていました。当時はそれがふつうの本の読み方でした。
本というのは、活版印刷の発明以後に一般に広まった、いわば新しいメディアです。『グーテンベルクの銀河系』という、活字文化を考察する有名な著作の中で、著者マーシャル・マクルーハンは、「黙って本を読んでいる人がいると、みんなが珍しがって見に来て、長蛇の列ができた」と書いています。
言葉は文字の前に存在していました。キリストや釈迦や孔子、ソクラテスも、彼らが語ったことを弟子たちがまとめています。聖書や経典、論語、ソクラテスの対話など、世界各地で最も読まれている書物は、実は自分で書いたものではないのです。
言葉は相手の魂に火をともすためのもの。どういう伝え方をするかによって受け止め方も変化しますが、文字にはそうした作用はありません。
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