「音読」を甘く見る人が知らない驚きのメリット コミュニケーション能力や非認知力もアップ!?

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家庭での音読は学校の宿題とは違います。小学校までは、ドリルを解くより、毎日どれだけ豊かに遊べるかが重要です。今の時代、楽しく遊ぶことはむずかしく、そのためには、とても頭を使わなくてはなりません。音読も、あくまで家族の中での楽しい遊びのひとつとして、習慣化するのがおすすめです。

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親はついつい、じょうずに正確に読めるかに関心を向けがちですが、ちゃんと読めているかをチェックするのはやめましょう。子どもがつっかえたり、まちがっても気にせず、もしわからないようなら「●●だよね」と、さりげなく助け舟を出してやればよいのです。

読み方には人格があらわれるので、読み手が変わると、受けとる側の感じ方も変わります。いつも子どもだけに読ませるのではなく、「きょうはお父さんが読むぞ」「おばあちゃんの読む昔話はおもしろいね」など、ぜひ家族みんながかわりばんこに読みましょう。

NGワードは「もう終わっちゃったの?」

相手が一生懸命読んでいるときは、一息入れたときに相づちを打ちます。お互いの呼吸のリズムが一致するのが「気が合う」ということ。無意識にやっていることも多いのですが、タイミングが合ってくると、読み手はより気持ちよく語れます。講演や授業などでも、聞いている人の反応がなければうまく語れないのと同じことです。

できれば子どもと向き合って、聞いてあげてほしいところですが、忙しい日常の中で、いつもそうできるとは限りません。ただ、家事をしながらでも、少なくとも耳はかたむけてあげましょう。「あ、もう終わっちゃったの?」はNGワードです。

音読の効果をアップするポイント
(画像:『頭のいい子を育てる 名作おんどく366』)

音読に限りませんが、子どもに学びを促すときには、「ダメ」に関わる言葉は決して使わないことです。

野球選手のイチローのお父さんは、息子がスランプで悩んでいるときに「悩むのは、そこまで進歩したからだ」と励ましたそうです。「きょうの読み方は心がこもっていたね」「前よりスムーズに読めていたよ」など、音読していること自体をほめ、前進していることを評価しましょう。

子どもは興味をもてば、教え込まなくても、なんでも自分から覚えていくものです。1日数分でいいので、音読をきっかけに、家族みんなが心を通い合わせるひとときをもてるといいですね。

汐見 稔幸 東京大学名誉教授、白梅学園大学名誉学長

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しおみ としゆき / Toshiyuki Shiomi

1947年、大阪府生まれ。専門は、幼児・児童教育学、保育学、教育学。著書に『本当は怖い小学一年生』『「天才」は学校で育たない』(いずれもポプラ新書)など。

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