わが子が負け組になると懸念する親が心得たい事 社会課題を教育の問題に責任転嫁するな

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それを痛烈に批判したのが、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の『実力も運のうち』(早川書房)です。「あなたが実力だと思っているその能力だって、いろんな運が重なって得られたのですよ」ということです。

教育の力によっていくら教育格差をならしたとしても、いまのままの社会構造では、微細な学力差が拡大強調され、結局、社会的地位の差はなくならないでしょう。悪いのは教育格差そのものではなく、メリトクラシーの構造です。

これは少なくとも教育だけで解決できる問題ではない。そこで、『「生存競争」教育への反抗』(集英社新書)という著書がある教育学者の神代健彦さんに聞きました。神代さんはその本で、「社会課題を教育の問題に責任転嫁するな」と訴えています。

「日本における『能力』という概念が非常に独特です。海外なら年収1500万円とか2000万円とかをもらって大きな裁量のなかで行う職務に従事する労働者に求めるような幅の広い力を、極端にいえば、アルバイト職員にまで求める風潮があります。年収300万円のひとにそこまで求めますか?という話です」(神代さん)

本来であれば一部のいわゆる「高スペック人材」にだけ求められるような能力を社会の構成員全員に求めているから、教育の現場にもそれが降りてきて、社会に出る前から競争させられて、子どもはもちろん彼らを支える親も苦しくなっているのではないかと考えられます。

「人間の能力の測り方だとか、評価基準のようなものが壊れてしまっていると私は思います。そこを地道に見直していかなければいけないのではないでしょうか。でもこれは50年とか100年とかの単位で時間がかかる話です。いま不登校の親御さんたちの不安解消にはなりませんよね……」(神代さん)

失敗や回り道がない人生なんて味気ない

メリトクラシーを終わらせる鮮やかな方法なんて、私にはわかりません。サンデル教授だって知らないと思います。

ただ、親の立場でできることは少なくとも1つあると思っています。子どもたちに「学力(学歴)をつけておかないと社会に出て苦労する」という脅しを言わないことです。こう言われて育った子どもたちは、勝ち組になろうが負け組になろうがメリトクラシーを維持する構成員になってしまいますから。

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