介護離職で心が不安定に…50代女性が復職した訳 仕事を親の介護のために辞めてはいけない理由

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どうしても一時的にまとまった時間を確保しなくてはいけない場面が出てくることもあります。そんなときに大きな助けになるのが、「介護休業」という制度です。

介護休業は、家族に介護を必要とする人がいる場合に長期の休みを取得できる制度で、法律で保障されています。要介護状態(または2週間以上常に介護を必要とする状態)で介護が必要な家族1人につき、通算93日まで休みを取ることができます。

また最大で3回まで、分割して取得することも可能です。雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方であれば、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金も支給されます。

ここで大切なのは、「いつ」介護休業を取得し、何をするかということ。介護休業というのは、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」としての休業期間で、自らが介護を直接担うためにあてる期間ではないと考えます。

直接的な介護をするのであれば、93日間の期間ではまったく足りません。ですので、介護休業は、例えば役所への申請や、介護サービスの手配、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談、家族で介護の分担を決めるなど、あくまで「これから介護と仕事を両立する上で、できるかぎり無理なく続けるための段取りをする」期間と考えましょう。

短期の休みは「介護休暇」を利用

この介護休業とは別に、通院の付き添いなどで短時間の休みが必要な場合には「介護休暇」制度を利用することができます。介護休暇は、1日または時間単位で取得できる休み。介護保険制度の司令塔的な役割で、介護を受けられるようにケアプランを作成したり、介護サービス事業者との調整の役割も担ったりするケアマネジャーとの短時間の打ち合わせに利用したり、介護保険を申請したりするときなどにも活用できます。

対象家族が1人の場合には年に5日まで、2人の場合には年間10日まで取得することができます。

少子高齢化が進むなか、仕事と介護との両立のための法的な整備は進んでいます。必要に応じて制度を利用し、介護保険サービスもうまく活用しながら、自分で「介護をし過ぎない」仕組みを作っていくことが大切です。

介護がまだ始まっていない方も、事前にこうしたことを知っておくと、いざというときに慌てないですみます。介護はいつ始まるか分からないからこそ、使える制度やサービスにどんなものがあるのか、介護に直面したときにどこに相談すればよいのかを知っておきましょう。

介護についての相談の最初の窓口となるのが、地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、地域の高齢者の暮らしを介護・医療・保健・福祉などの面から総合的にサポートするために設置されている機関で、市町村が委託する組織によって公的に運営されています。

ただ、地域包括支援センターなどの相談窓口は、「その場で問題を解決してくれる場所」ではなく、「選択肢を提示してくれる場所」です。相談に行くときには、例えば「仕事に戻りたい」けれど「日中、家で1人にしておくことが心配」など、「何に困っていて、どうしたいのか」を明確にしておきましょう。さらに「こうしたい」という希望もセットで話すことで、より希望に合った選択肢を提示してもらえます。

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