対馬の神秘的な3つの聖地を旅して得た圧倒体験 海への信仰と太陽信仰という2つの神話世界

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対馬 烏帽子岳
南北に細長い島、対馬の真ん中あたりにある烏帽子岳(えぼしだけ)展望所からの眺め
目の前の景色に神々の物語を重ね合わせ、神々の姿を見出す。ほんの少しでも神話を知っていることで風景に奥行きが生まれる。古くから日本人は想像力を駆使して、神話の世界を楽しんできました。
今回は、神話のストーリーに触れながら、神話が伝わる土地の中の印象的な場所や神社などを写真とともに案内する神話旅の本「『神話』の歩き方」より、「対馬」の一部を抜粋してお届けします。

対馬に残る伝説の地 和多都美神社

山幸彦(やまのさちひこ)が釣り針を探しに行った海の宮。この場所は、海の中にあるとしか示されていない。

すなわち其の道に乗りて往でまさば、魚鱗(いろこ)のごと造れる宮室(みや)、それ綿津見神(わたつみのかみ)の宮ぞ。
(その潮の流れに乗って行けば、魚の鱗のように連なった立派な宮がある。それがワタツミの宮だ。)——『古事記』上巻

玄界灘に位置する長崎県の対馬の和多都美神社は、社伝によると海の神・豊玉彦尊(とよたまひこのみこと=ワタツミのこと)がこの地に宮を作り、「海宮(わたつみのみや)」と名付けたという。境内には大きな磐座があり、トヨタマビメの墳墓と伝えられている。日向とは異なった神話の景色が広がる。

海の神の宮とされる和多都美神社は、神の宿る岩・磐座への信仰が色濃く残っている。トヨタマビメの墳墓だけでなく、鱗のような模様の岩「磯良恵比須(いそらえびす)」が、これまた珍しい三柱鳥居の間に祀られており、「いろこの宮」の片鱗ではないかと思われる。

鳥居をくぐり、神聖な場所である境内へと入っていく。本殿正面の5つの鳥居のうち、2つが海中に立っていた。船で海からお参りするのが本来の姿だったのだろう。しかし、海へと続く鳥居を見ていると、海中から神が現れてくる通り道のようにも感じられる。

潮の満ち引きによって、鳥居や「磯良恵比須」のあたりの景色が一日のうちに大きく変わっていく。見たい姿があるなら、潮位を調べてからがおすすめだ。

南北に細長い対馬の、ちょうど真ん中あたりにはトヨタマビメを祀る海神神社がある。海神は「かいじん」と読むが、「わたつみ」と呼ばれることも多い。社殿は、山全体を神域とする伊豆山の中腹にある。息を切らしながら登り、後ろを振り返るとけっこう急な石段だったことに気がついた。

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