大学教員への転身を夢見る人がわかってない現実 ビジネス界の常識とはかけ離れた異次元の世界

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実務のプロフェッショナルをプロフェッショナルな実務家教員に育成する動きも見られるようになってきた。

文部科学省は、「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」(2019年度)で、東北大学、名古屋市立大学、社会情報大学院大学、舞鶴工業高等専門学校を全国4拠点の実務家教員育成の代表校に選定した。

この背景には、高校から進学した大学生に実務教育を施すだけでなく、「人生100歳時代」と言われる高齢社会、多くの仕事をAI(人工知能)が代替して人間に時間的余裕が生まれる「Society 5.0」の到来を見据えて、社会人のリカレント教育(学び直し)を拡充しなくてはならない、という文部科学省の思惑もある。

このような流れに沿って実務家教員が増えてくることだろう。そこで気になるのが、ビジネスパーソンが無意識に使う「大学の先生」である。彼らは、表層的イメージに基づいて、「大学の先生」を誤解しているのではないかと心配になってくる。

確かに、大学教授は学内外で「…先生」と呼ばれるので、未経験者は自分が大学時代に見てきた先生を思い浮かべがちである。それは、小中高の先生と同様、教壇に立ち教えている姿である。だから、これまでの培ってきた経験について話せば、「先生稼業」も務まるのではないかと思っている節がある。

実務家教員は必ずしも博士の学位を持っていない

だが、同じ「大学の先生」であっても、専任と非常勤に求められる条件の差は大きい。今さら言うまでもないが、専任ともなれば高い研究能力が求められる。今や、大学院博士課程後期を修了した純粋培養型研究者の多くは博士を取得しており、専任教員として採用される場合は、博士を持っていることが必須条件にもなってきている。

ところが現状を見る限り、実務家教員の場合、必ずしも博士の学位を取得しているとは限らない。とはいえ、社会人大学院などでは、「なぜ、修士論文を指導している教授が博士を持っていないのですか」といった意見が学生から聞かれることもあり、近年では、博士を持つ実務家教員も増えた。

だから、実務家教員と一口に言っても、実態はさまざまである。中には、純粋培養型研究者顔負けの学究生活をしている人もいる。筆者の元同僚は、大手企業で現場、管理部門でリーダーを務めた後、働きながら大学院で学び博士を取得。その後、国立大学の教授、学会の会長も務め、現在は、ある私立大学の学長職にある。

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