大学教員への転身を夢見る人がわかってない現実 ビジネス界の常識とはかけ離れた異次元の世界
リストラに応じず65歳定年まで会社に残ったとしても、これまでの職務経験を生かしたキャリア人生を継続できるのだろうか。そのような人は比率的少ない。65歳定年とは名ばかりで、60歳が実質上の定年。それ以降は、1年更新の再雇用という雇用形態で、さらに減った賃金で処遇される人がほとんど。仕事も経験が生かせる内容であるとは限らない。
このような処遇と職場環境に満足せず、65歳を前にして退職していく人は少なくない。現状でさえこうなのだから、70歳まで働くとなると、同じ会社に残り続ける人がどれほどいるのだろうか。
同じ会社に残り続けるのではなく、これまで培ってきた能力を生かせる場があれば、心機一転したいと考えるシニアは多いのではないか。身体と頭を使い、人との交流を保ち続けられるという点で、医学的にも仕事は健康管理に役立つとされている。実力を存分に発揮したいと考えながら、押し付けられた仕事をこなすだけの毎日にストレスを感じてしまったのでは本末転倒。心機一転するというのも、健康管理面においても良き一策になるかもしれない。
実務家の大学教員が増えている
とくに、高度な職業経験・技能を持つプロフェッショナルが、同じ会社で不満足な環境に置かれ、惰性で出勤する生活を強いられれば、疑問を抱くことだろう。そのような人たちが、脱会社の選択肢として希望する選択肢の1つが「大学の先生」である。知的欲求を満たせるだけでなく、自身の社会的経験を若い人に伝えられる適職に見えるのかもしれない。
そう思うとしても不思議ではない。「専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験」「高度の実務の能力」(以上、文部科学省の規定)を有する「実務家教員」は年々増えている。
文部科学省・学校教員統計調査によると、2018年度に新規採用された大学教員1万1494人のうち、15%が実務家教員であった。これに非常勤の講師、客員教授(特任教授は専任である場合が多い)として、教壇に立っている教員を加えると実務家教員の比率はさらに高まる。
この傾向に拍車をかけているのが、既存の職業教育に主眼をおいた専門職大学院に続き、2019年度から発足した学部レベルの専門職大学である。専任教員のうち実務家教員の割合を4割以上、その担当授業科目が標準単位数の1割以上配置していなくてはならないという条件が定められている。
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