逆に、学校教育法で定められた正式な学校のほうをフリースクールに近づけようとするのが、文部科学省が指定する「不登校特例校」というしくみです。ちょっとした配慮を加えたり、環境設定をわずかに変えたりするだけで、不登校を経験した子どもたちが生き生きと学校に通えるようになります。だったらほかの学校もみんなそうすればいいじゃないかという気がしてきます。
フリースクールや不登校特例校で学んだあとは、通信制高校に進学する子どもも多くいます。かつての通信制高校は、働きながら学ぶためのしくみでしたが、いまは、通学型の通信制高校がメジャーになっています。自分のペースで学校に通い、場合によっては部活などにも参加できるのが通信制高校です。当然ですが、そこから大学にも進学できます。
子どもたち1人ひとりの個性や事情に応じた学びの場が、たくさんできているのです。
ランチする場所を選ぶように学ぶ場所を選べる社会
オフィス街の会社員のみなさんのランチタイムはこんな感じではないですか。「昨日はおそばを食べたから、今日はカレーかスパゲティーにしようか」みたいな。選べること自体が楽しかったりしますよね。
一方、お役所に決められた食堂でみんなと同じ定食を食べるしかないのが旧来の学校制度です。決められた定食だけがあって、料理の種類や量を自分では選択できません。出されたものは残しちゃいけない。しかもボリューム満点の料理が休むひまなく、わんこそば状態で際限なく提供されて、食べる順番や、食べるペースや、お箸やお椀の持ち方まで指図される……。そんな食堂にはもう行きたくないと思うひとがいても当然です。
その点、フリースクールや塾などは、自分で頼んだぶんだけ好きな料理を出してくれるお店です。おそば屋さんやカレー屋さんのように、得意分野が決まっているお店もあれば、メニューを選べる定食屋さんのような場合もあります。不登校特例校や通信制高校は、小鉢を選べたり、白米を五穀米に代えたりできて、しかも最初は少なめに盛ってあって、食べられたらおかわり自由というスタイルの定食屋さんでしょうか。
メニューを選べない定食屋さんにしたって、箸の上げ下ろしや食べるペースにまで口を出さなければ、決して悪いものではないと思います。
メニューが決まっている定食屋さんから、自分でメニューをカスタマイズできる定食屋さん、そしておそば屋さんやカレー屋さん……そのときどきの状態に合わせて自分で選べるようにしたら、毎回の食事の時間が楽しくなるはずです。これが私のイメージする、モザイク模様の学びの環境です。
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