リスクや危機に対処できる「優れた経営者」の手法 「スタンフォード大学発」未来洞察のアプローチ

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②簡便さを武器にしている

2つ目は、これがイベントベースの簡便さを武器にしたフレームワークだという点だ。トレンドを示した折れ線グラフを作成するには、データを取って数値化して集計を取る必要がある。政府などが統計を取っていればよいが、当該ビジネスに関係するデータが必ずしも手に入るとは限らない。

ヤヌスコーンは、普段の業務で見聞きしたことを書き出すだけでトレンドが見えるため、データの数値化や統計が必要ない。きわめて使い勝手が良いフレームワークなのである。

③複数のトレンドから全体を示す

3つ目は、複数のトレンドから成る全体を示すという点である。ヤヌスコーンは、印象に残った出来事を記入しながら未来を洞察していく。断片的な事実を多面的に洗い出し、事実を点として配置して線で結ぶことによってトレンドを描きだす。

一般的な未来洞察というのは、業界動向や市場統計など、定量的な数値データが中心で、折れ線グラフなどによって示されるものだ。どうしても一本の線形的な未来をイメージさせてしまうので、全体像が見えにくくなってしまう。

優れた経営者が押さえるべきポイント

トレンドが見えてくれば、それらが相互に影響を及ぼし合うという可能性を探る。特に、複数の流れが1つに収束していくような兆候は見逃してはならない。未来についての洞察がよりはっきりとするはずだ。

歴史は一直線に伸びるとは限らない。断続的に変化するポイントがあるものである。それは、突然現れた特異点ではなく、過去から継続する複数のトレンドが交わりあって生まれたポイントである。あるトレンドと別のトレンドが合流すれば相乗効果的に変化が進むことだろう。逆に、お互いにぶつかり合うようなことがあれば、停滞するかもしれない。

未来というのは、的確に予測することはできない。しかし、どのようなことが起こりうるのかの可能性をイメージすることはできる。経営者は、自社の経営に関係するトレンドの分析を怠らず、将来の脅威と機会に備えるべきである。

ところが、多忙な経営者は、なかなか未来まで見据えるのが難しい。一般的な経営者は、業界の動向をつねに気をかけていても、受け身の姿勢で適応するので精一杯であろう。未来に対して漠然としたイメージしか持つことができず、対応が後手になりがちである。未曾有の危機に直面し、大きく業績を落とし、最悪の場合は破綻してしまう。

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