≪脱サラして「専業神職」になった43歳≫“知られざる業務”で得た、勤め人時代とは違う幸せと楽しみ

「地域の神社のお賽銭は年間で数千円程度、氏子さんが負担してくださる年俸も年数万円程度です。生活が不安定になるかもしれないが専業神職になるなら今しかない、と脱サラを決めました」
こう話すのは、静岡県御殿場市にある永原大神宮の宮司・勝又啓(ひろむ)さん(43歳)だ。現在は、転職が一般的な選択肢になっていて、新卒で入社した会社に定年まで勤める人のほうが稀な世の中になっている。だが、安定した収入を得られるサラリーマンを辞めて、しかも神職の世界に飛び込んだのはなぜなのか。そこには、勝又さんの生い立ちと、自身ができることで世の中に貢献したいという強い思いがあった。
最初の転機は“大学受験の失敗”
勝又さんは、東海三菱自動車販売、御殿場市商工会勤務などを経て、2019年に脱サラして専業の神職になった経歴を持ち、現在は同神社を含め静岡県内16社の宮司を兼務する多忙な日々を送っている。彼が専業神職に転身したのは、神社界の後継者不足に危機感を抱いてのことだった。
人手不足は俗世だけの問題ではない。宗教界においても後継者不足が深刻化しており、多くの日本人が折に触れて参拝する神社も例外ではない。神社本庁傘下の神社は全国に7万8162社あるが、宮司は9936人しかいない(神社本庁調べ、2024年12月末現在)。つまり平均すると一人の宮司が約8社を掛け持ちしていることになる。
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