リスクや危機に対処できる「優れた経営者」の手法 「スタンフォード大学発」未来洞察のアプローチ
日本の経営学では、ビジネスモデルの実践研究が盛んだ。コンサルタントや経営者から研究者まで、いろんな立場の筆者が、思考法、多様なツール、パターン集などをまとめ、書店には多くの本があふれている。
日本のビジネスモデル研究の第一人者でもあり、早稲田大学で起業家育成プログラムを担当する井上達彦氏が、学術研究や海外のイノベーションプログラム、実務の最前線で使われている方法などを集約し、ビジネスモデルの発想法から事業の循環までを描いた『ゼロからつくるビジネスモデル』がロングセラーとなっている。
同書は500ページを超える大作ではあるが、今回は、同書で紹介されている危機管理と未来洞察の手法を紹介する。
「未曾有の危機」は何度も起こる
2022年2月下旬以降、世界を震撼させているロシアのウクライナ侵攻。多くの経営者は「想定外の出来事」として受け止めたようだ。2019年から広がった新型コロナウイルス感染症。こちらも多くの経営者が「突然現れたパンデミック(世界的流行)」と受け止めた。
予見できなかったと割り切ってしまうのは簡単だが、会社の経営においては、いつもそれでは成り立たない。ロシアと旧ソ連構成国の間では21世紀に入ってから地政学的な対立や紛争が起きていたし、ウイルスでもSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の脅威にさらされていた。兆候はあったのだから、何かできたかもしれないと考えるべきであろう。
よく「未曾有の危機」とか「世紀に一度の出来事」などと言われたりするが、いったいどのくらいの頻度で起こるのだろうか。
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