自動運転や電動化、バイク新時代への先端技術 4輪以上に難題の多い次世代2輪に向けた開発

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トップブリッジ部
開発車両のトップブリッジ部(筆者撮影)

もともとは、2017年に北米の電子機器関連見本市「CES」や「東京モーターショー」などで公開された技術だが、当初は前輪を前後左右に自動で動かし、バイクが停止状態を保ったまま自立し、極低速でのスムーズな旋回などを行った。転倒しない状態を保つために車体の傾きをジャイロセンサーで検知し、その電気信号をステアリングと繋がったトップブリッジ下部に搭載した駆動装置のアクチュエーターへ送ることで、前輪を制御する仕組みだ。

より自然な制御の「ライディングアシスト2.0」を披露

NM4の後方
後方から見た開発車両(筆者撮影)

今回の展示会で披露されたのは、その進化版である。従来型をライディングアシスト1.0、新型はライディングアシスト2.0と呼ばれている。従来型は、前輪のみの制御だったため、例えば曲がりたいときにシステムの介入が強すぎて、ライダーが違和感を持つ場合があった。2.0はその点を改良するため、車体と後輪の間に「車体・後輪揺動機構」を追加したことで、より自然な制御を可能とした。

後輪揺動機構
新たに追加された後輪揺動機構(筆者撮影)

この車体・後輪揺動機構とは、車体後部にモーターを搭載し、リアタイヤと車体を左右にスイングさせることで、バランスを取る仕組みだ。後輪が倒れた方向と反対側に車体を動かすことで、復元力を発生させる。また、その際は、前輪操舵制御の比率を下げることで、従来型1.0にあったライダーの違和感を低減させることも可能となる。極低速での旋回や8の字走行はもちろん、モーターなどで後退させる機構を持つバイクでは、低速のリバース走行でも高い安定性と自然な操作感を実現した。

ちなみに搭載するバイクは、ホンダが2019年まで販売していた「NM4」(現在は生産終了)。750(745)cc・2気筒エンジンを搭載し、近未来的なスタイルなどが当時話題となったモデルだ。シフト操作の自動/手動が選択できる独自の「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」の採用で、スクーターのようにオートマチック運転も可能となる。

さらにホンダは、ライディングアシスト2.0をベースに、極低速時の転倒防止や安定性向上だけでなく、より多様なシーンでの車両運動制御を行う技術開発も目指している。まず、2.0で培った制御技術の応用により、ホンダ4輪車の安全運転支援システム「ホンダセンシング」が持つような機能をバイクへ搭載することが挙げられる。

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