緊急事態宣言が出た「サル痘」今の重要論点3つ ウイルスに残る謎、ワクチンや薬も不足
第1の論点は、ウイルス拡散のメカニズムだ。
今回の流行が始まった当初、保健当局は、このウイルスは感染者が咳やくしゃみをしたときに放出される呼吸器飛沫のほか、膿のたまった皮膚の病斑に触れたり、汚染された寝具類を共有したりといった濃密な接触を介して広がると主張していた。
これらはいずれも真実だったが、それで全体像が示されたことにはならないかもしれない。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、これまでの感染者の99%以上は、ほかの男性と濃厚接触してサル痘に感染した男性で占められている。サル痘と診断された女性と子どもは8月1日時点で、それぞれ13人と2人にすぎない。
ウイルスは唾液、尿、便、精液から検出されているが、これらの体液が感染力を持つのかどうか、とりわけ性行為中に皮膚と皮膚が直接触れる以外のルートでウイルスが伝染するのかどうかは明らかになっていない。ただ、これまでの感染パターンから科学者は、性行為による感染の可能性を疑っている。
無症状の人がサル痘を広める可能性はない
とはいえ、サル痘が簡単に広がることはなく、まだ人口全体に波及していないことも明らかだ。ソーシャルメディアでは、店で購入した服や感染者とのごく短時間の会話で感染する危険があるかのような投稿も一部に見られるが、そのようなことはない。
CDCによると、無症状の人がサル痘を広める可能性はないという。ただ、少なくとも1件の研究では、無症状の男性からウイルスが検出されている。さらに症状のパターンも、過去の流行で観察されたものとは異なっている。
アフリカでは、感染した動物に触れたり、野生動物の肉を食べたり、それらの動物から作られた医薬品を使用したりした後に発病した人もいた。症状としては、発熱や体の痛みに続いて、特徴的な発疹がまず顔や手のひら、足などに現れ、その後、全身に広がっていくことが多かった。乳幼児や妊娠中の女性は、重症化のリスクがとくに高いように見えた。