緊急事態宣言が出た「サル痘」今の重要論点3つ ウイルスに残る謎、ワクチンや薬も不足
アフリカ以外の地域で起きた流行では、発熱や呼吸器症状がまったくない患者も多く、病斑が現れる場所もたいていは生殖部や肛門部などに限られるため、一般的な性感染症と間違われやすい。
イギリスではサル痘の症状に関する公式の説明が修正され、口内粘膜疹と、肛門・直腸の痛みや出血も含まれるようになった。欧米各国における症状の現れ方には、ウイルスの自然な進化経路が正確に反映されているとみる科学者もいる。
ワクチン不足は深刻
第2の論点は、ワクチン接種は1回で足りるのかどうか、だ。
2種類あるサル痘のワクチンのうち、より安全性が高い「ジンネオス」を製造しているのはババリアン・ノルディックというデンマークの小さな会社であり、供給量に厳しい制約がある。そのため、サル痘の感染が広がる中でも、バイデン政権によるワクチン追加調達の動きは鈍かった。
現在、連邦政府は約700万回分のワクチンを確保したとしており、今後数カ月間にわたって順次供給される予定となっている。各州には32万回分のワクチンを発送済みで、食品医薬品局(FDA)は7月27日に80万回分の使用を追加承認した。ただ、配布がいつになるのかははっきりしない。
ジンネオスは本来28日間隔で2回接種するワクチンだが、ワシントンやニューヨークなど一部の都市は、より多くのワクチンが入手可能になるまで2回目の接種を先送りしている。イギリスやカナダが採用している戦略に倣った措置だ。
ワクチンはウイルスにさらされた後、数日以内に接種すれば症状を軽減することもできるが、供給量が足りない足元では予防手段としてしか使われていない。