「民主主義と資本主義」奇妙な連携が破たんする日 もはやお荷物?民主主義はどうなってしまうのか

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だが、現実は残酷だった。ネットを通じた民衆動員で夢を実現するはずだった中東民主化運動「アラブの春」は一瞬だけ火花を散らして挫折し逆流した*8。

むしろネットが拡散するフェイクニュースや陰謀論やヘイトスピーチが選挙を侵食し、北南米や欧州でポピュリスト政治家が増殖したと広く信じられている*9。

トランプ前アメリカ大統領やブラジルのボルソナロ大統領などのお笑い芸人兼政治家たちが象徴だ。民主主義の敗北に次ぐ敗北。21世紀の21年間が与える印象だ。『民主主義の死に方』『民主主義の壊れ方』『権威主義の誘惑:民主政治の黄昏』といった本が、ふだんは控え目な見出ししか付けたがらない一流学者たちによって次々と英語圏で出版されたこともこの印象を強めている*10。

実際、民主主義は後退(backsliding)している。今世紀に入ってから非民主化・専制化する方向に政治制度を変える国が増え、専制国・非民主国に住む人のほうが多数派になっている。この傾向はこの5〜10年さらに加速している*11。

今や民主主義は世界のお荷物なのだろうか? それとも何かの偶然や、民主主義とは別の要因の責任を民主主義に被らせているだけなのだろうか?

民主主義的な国ほど、経済成長が低迷し続けている

民主主義こそ21世紀の経済を悩ませる問題児であるようだ。私とイェール大学の大学生・須藤亜佑美さんが独自に行ったデータ分析の発見である。世論に耳を傾ける民主主義的な国ほど、今世紀に入ってから経済成長が低迷し続けている(図1)。

(出所:『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』)

図1の横軸には、その国の政治制度がどれくらい民主主義的かを表す「民主主義指数」をとった。スウェーデン発の「多種多様な民主主義(Varieties of Democracy、通称V-Dem)」プロジェクトが作成したものだ。結社や表現の自由、公正な選挙などの項目を総合し指数化している*13。

一方、縦軸には2001〜2019年の間の平均GDP成長率をとってみた。民主主義と経済成長の間に負の相関関係があり、民主国家ほど成長が鈍っていることがわかる。どの国を重視するかの重みづけを変えても、民主主義指数をほかの機関が作成したものに変えたり、総GDPを1人当たりGDPに変えたりしても、結果はほとんど変わらない*14。

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