ジンギスカン「戦前は東京名物だった」意外な事実 北海道より東京のほうが羊の消費量が多かった

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現在の北京では、烤羊肉は羊の炙子烤肉(ジイズウカオロウ)と呼ぶのが一般的となっています。

中国が国家的事業として編纂した『中国名菜譜〈北方編〉』によると、 炙子烤肉は順治年間(1644~1661年)に少数民族である蒙古族の官吏が愛好していた烤肉(焼肉)がその起源。ジンギスカンは正陽楼の烤羊肉に北京在住の日本人達がつけたあだ名ですが、偶然にもモンゴルとも縁があったのです。

現在の北京でも、創業1848年の老舗「烤肉季」などで炙子烤肉を食べることができます。

烤肉季の炙子烤肉も、日本のジンギスカンのように屋内で食べるようになり、穴のふさがった溝付きの鉄板で羊肉を焼くようになりました。

ただし、烤肉季の鉄網は正陽楼の鉄網と異なり平らだったため、現在の烤肉季の鉄板は、日本のジンギスカン鍋のように真ん中が盛り上がっておらず、平らな溝付き鉄板となっています。

烤肉季の炙子烤肉と日本のジンギスカン。鍋の形こそ違いますが、双方とも屋外バーベキューである烤羊肉から生まれた、いわば兄弟のような間柄の料理なのです。

しゃぶしゃぶも正陽楼から広まった料理

ジンギスカンのほかにも、正陽楼と縁の深い日本の料理があります。しゃぶしゃぶです。

日本のしゃぶしゃぶの起源は、北京料理の羊のしゃぶしゃぶ涮羊肉(シュワンヤンロウ)。

あのしゃぶしゃぶ独特の形の鍋は、涮羊肉で使用する鍋、火鍋子(ホウコウズ)に由来するもの。しゃぶしゃぶに使用するゴマダレも、涮羊肉に使用するゴマダレ、芝麻醤(チイマアジャン)に由来するものです。

『中国名菜譜〈北方編〉』によるとこの涮羊肉、もともとは中国の少数民族である回族の料理であったものでした。これを漢族が経営する正陽楼が北京に広めて一般化したのです。

ジンギスカンとしゃぶしゃぶ、2つの料理の由来に、北京の1つの料理店が深く関わっていたのです。

近代食文化研究会 食文化史研究家

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きんだいしょくぶんかけんきゅうかい / Kindai Shokubunka Kenkyukai

食文化史研究家。2018年に『お好み焼きの戦前史』を出版。以降、一年に一冊のペースで『牛丼の戦前史』『焼鳥の戦前史』『串かつの戦前史』『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』等を出版。膨大な収集資料を用いて近代の食文化史を解き明かしている。(Amazon著者ページTwitterアカウントnote

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