本連載初となる現役学生の話だったが、やはり貸与型と違い、返済義務がない給付型は、将来への不安がなく、話を聞いていて気持ちがいい(申請条件が厳しいというのはもどかしさを感じるが……)。
花田さん自身も給付型奨学金に対しては、感謝の気持ちしかないようだ。
「実家がとんでもなく貧乏というわけでもないのに、これだけ支援してもらえたのは本当にありがたいですね。大学には優秀な人もいれば、変な人もいるし、尖った人もいる。ゼミにも一緒にロースクールを目指す友人たちがいますし、寮にも尊敬できる人が多くいます。そういう人と切磋琢磨しながら勉強できる環境は本当よかったですね」
それでも、奨学金制度については思うところもあるという。花田さんがもし、高校時代の自分に言えたら、こんなことを伝えたいそうだ。
「奨学金というのは『大学から借りるもの』と思い込むほど知識がなく、給付型奨学金の存在も知らなかったので、『高校生のうちから奨学金について調べておくべきだ』と言いたいですね。
それでも、当時は部活動や受験勉強で忙しい生活を送っていたし、そもそも大学に受かるかもわかりませんでした。だから、高校生の頃から大学に入ってからの奨学金のことを考えるのが難しいのも理解できます。
あと、私が通っていた高校は富裕層の多い地域の進学校だったため、高校で奨学金の説明会や紹介がほとんどなかったんですよね。大学1年生の時から給付型奨学金を受けるためには、高校3年生の時点で申し込んでおかないと受けられないものも一定数あることを、大学に入ってから知りました。高校在学中、そして大学進学後の奨学金制度について、高校はもっと案内してくれてもよかったと思います」
JASSOの給付型も条件はなかなか厳しい
ちなみに、2017年からJASSOも本格的に給付型奨学金を創設し、低所得世帯への支援が手厚くなっている。ただ、「あなたと生計維持者の市町村民税所得割が非課税であること」(第1区分の場合)など3つの要件が存在している。JASSOにもJASSOの理念や都合もあるので、もちろん否定はしないし、むしろ歓迎したい動きだが、現状の要件では、共働き家庭などはわりと難しいのも事実である。
そういった意味で、花田さんは信用金庫と財団という、地域や民間企業の”共助”に応援してもらえた。
「貸与型を借りた人と比較するのは的外れなのかもしれませんが、やっぱり返す必要がないというのは、経済的な面で余計な負担を感じることが本当にないんです。
だからこそ、社会人になった暁には、何かしらの形で奨学金を給付してくれた企業や財団に少しでもお返しできたらなと思っています。このような思いが、企業や財団の人たちに伝わっていったら、もっと給付型奨学金も充実していくのかなと思いますね」
もちろん、彼自身が優秀なのも、給付型奨学金をもらえた大きな要因だろう。企業としては、言葉にはしないが「もし入社してくれたら……」という気持ちもあるはずだ。
それでも、「自分は恵まれすぎている」「だからこそ、社会人になったら社会に恩返しをしていきたい」と、朗らかに語る花田さんを見ていると、人に投資することがいかに健全で、意味のあることなのかを教えてくれるかのようだった。
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