FOMC後のアメリカに横たわる3つの大きなリスク 最悪のスタグフレーションシナリオも想定せよ

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まず、企業の過剰在庫は、以下の2つの点で景気の大きな押し下げ要因になると考えられる。1つ目は、小売業の過剰在庫処分に伴う収益の悪化である。新型コロナウイルスの感染爆発によってサプライチェーンの問題が深刻化して以降、小売業界は品切れ状態を回避するべく、ここまで積極的に在庫を積み上げてきた。

企業在庫は前年同月比で17.7%も増加

だが、今年に入って消費が減速してきており、積み上げた在庫が不良債権化、どの企業も在庫処分が喫緊の課題となりつつある。

もしこうした不良在庫を処分するために価格を引き下げざるをえなくなれば、当然ながら売上高はともかく利益は大幅に減少、業績悪化につながる。6月に小売り大手のターゲットが過剰在庫から業績見通しを引き下げ、一時は小売業を中心に株式市場全体に売りが加速する展開になったことはまだ記憶に新しい。

今や企業在庫は前月比では2021年4月から2022年5月まで1年以上にわたって連続して増加、2022年5月は前年同月比で17.7%増えた。大幅な利上げで経済活動が鈍化しているときに在庫放出が重なれば、アメリカ経済が再度マイナス成長に陥ることもありうる。

当然、この裏返しとして、在庫の積み増し需要が急速に減少するのだから、今後数四半期は景気の大きな押し下げ要因となる可能性にも十分な注意が必要だ。アメリカ経済における在庫投資の実質国内総生産(GDP)に対する寄与度は、2021年7~9月期に2.2%のプラス、同10~12月期には5.3%のプラスとなり、昨年後半の経済成長加速の原動力となった。

だが、2022年1~3月期には一転して0.4%のマイナスと、逆に経済成長の足枷になりつつある。在庫の積み増しが急速に進んでいるときには、実際の経済活動以上に需要が生じてその分GDP押し上げに寄与していた。だが過剰在庫の解消局面では、需要は在庫放出で賄えることになるため、新規需要は思った以上に落ち込んでしまう。

また、住宅ストックの積み上がりにも、十分な注意が必要だ。住宅ローン金利の上昇が足枷となり、住宅販売のペースは目に見えて鈍っている。こうした中、完成した住宅の在庫はジワジワと増加してきている。

住宅価格はなお高止まりを続けている。だが、この先ストックが一段と積み上がるなら、住宅業者や売り手の間に「価格を引き下げてでも販売しよう」という動きが出てくる可能性は高い。

今のところ、住宅市場に関しては、2008年のリーマンショックのときほど状況は深刻ではないとの見方が大勢を占めている。だが、住宅価格の下落が顕著になってくれば、資産効果が消滅する中で、当然のことながら、景気や株価にさらなる悪影響を及ぼす恐れが高く、十分な注意が必要だ。

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