アメリカのインフレはそう簡単には収まらない 表面的な数値だけですぐに判断するのは危険

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アメリカでの日常生活では「生活費15~20%アップ」は当たり前。マクロ的な数値よりも厳しいものがある(写真:ブルームバーグ)

4月の中旬、約2カ月半ぶりにニューヨーク(NY)に戻ってきた。東京とNYを行ったり来たりの二重生活も5年を超えてきた。最近はようやく改善されつつあるが、ちょっと前までは新型コロナウイルスに関する水際措置の影響などで、それぞれにおける滞在期間が長く、しんどかった。

NYを発って東京に向かう際には大雪で1日出発が遅れるほどだったのが、帰ってみると、あちこちで桜が満開だ。オミクロン株の感染はいまだに猛威を振るっているが、当局が経済活動を優先する方向に方針転換したこともあり、街はすっかり活気を取り戻している。

地下鉄やバスなどの公共交通機関ではまだマスクの着用が義務づけられているものの、屋外でマスクをする人は少数派となっている。人気の観光スポットなども人でごった返しており、コロナの影響を見つけるのは日増しに難しくなっているというのが現状だ。

マンハッタンにおけるアパートの家賃は、2月・3月と連続で過去最高を更新したらしいが、やはりそれだけ街に人が戻っているということだろう。

堂々値上げ、その分「サービス+スマイル」のアメリカ

もっとも、まったく元どおりになっていないこともある。それは、アパートの家賃高騰でもわかるように、物価である。

筆者が住んでいるのは、ブルックリン地区のサンセットパークというところだ。4月12日に起きた銃撃事件で一躍有名になってしまったことで耳にされた方も多いと思われる。

ここは街の半分はチャイナタウンであり、NY市の中でも比較的物価が安い地域として知られる。目抜き通りには安くてうまい中華料理屋が並び、住民の胃袋を満たしている。

東京から戻ってすぐに、近くの屋台でいつもの焼きそばとビーフンを買ったのだが、1人前で2.75ドル(約358円)した。やぱりNYを出発した時点からは24%ほど値上げしていた。もちろん、このご時世であるから値上げは当然だし、1人前の量は日本の約2倍はあってこれでも十分安い。だが、こうした屋台は最後の最後まで値上げをしないだろうと高をくくっていただけに、ショックも結構大きかった。

屋台のおばちゃんはいつものように人懐っこい、クシャクシャの笑顔をこちらに振り向けながら、値上げしたことを少し詫びるかのように、いつもより多めに焼きそばを盛ってくれた。「ステルス値上げ」と揶揄され、価格は据え置いたまま中身を減らす日本のそれとは違い、堂々と値上げしてその分サービスで量を増やすというのは、いかにもアメリカ的だなとあらためて思ったりもした。

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