萩原聖人さん「沖縄戦を戦った県知事を演じて」 50代になって思う「才能より人格の時代」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

先ほども言いましたが、人にやさしくできなかったことは多々あります。「どうしてもこの人にはやさしくできない。自分には無理だ」という人がいることは否定できないので。それは僕にとって一種の格好悪さなので、自分がそういうことを稀にしてしまった日は、反省しています。

ただし、苦手な人についても何周かすると見え方が変わり、相手を客観視できるようになるというのも、今までの体感としてあります。客観性を持って相手を見ることができるようになると、心に余裕が生まれる場合もあります。そうしたトライ&エラーと反省を繰り返していくと、自信を持って再会できるような感触はあります。

©2022 映画「島守の塔」製作委員会

――萩原さんの生き方は『島守の塔』で演じた、島田叡さんにもつながるような印象を受けました。

島田さんは実在した沖縄県知事ですが、彼は彼なりの武士道や信念に基づいて行動していたのではないでしょうか。

彼は学生野球の名プレーヤーとしてならした方。作中で幾度か「チームワーク」という言葉が出てきますが、独りでは物事は成し遂げられないことを、実際の経験を基に理解していた方なのではないかと。チームワークを意識することが、人を大事にする1つのきっかけになっているのだろうと意識しつつ演じました。

おこがましいかもしれませんが僕は以前、草野球のチームを持っていたので、チームワークという言葉の意味はそれなりにわかっているつもりです。俳優業は野球のようなチームプレーはないかもしれませんが、自分1人では引き出せないポテンシャルは、人にしか引き出してもらえないと実感しているので。他者がいないと、人は進化できないのではないかとも思っています。

避けるばかりではうまくいかない

――その考え方は、ビジネスパーソンにも当てはまるかもしれません。

得意不得意は当然ありますが、コミュニケーションを恐れて避けるばかりではうまくいかないことは、どんな仕事でも同じかもしれませんね。

人を大事にするって、言葉にすると簡単でも実行するのは大変だと思います。自分のことよりも、人のことを考えなければいけないので、できるようになるまで時間もかかります。

映画の中では、兵庫県出身の島田さんが沖縄に来て、文化も言葉も異なる人たちとスムーズに関係を築いていくのですが、最初に一緒にお酒を飲んで踊ったことは大きかったと思います。そうしたちょっとした時間をもうけると、コミュニケーションを図りやすくなるかもしれません。

繰り返しますが、彼は人を大事にする人でした。沖縄への米軍上陸は必至と見られている中で、沖縄県知事にならないかとの打診を即快諾しました。「俺が(沖縄へ)行かなんだら、誰かが行かなならんやないか。俺は死にとうないから、誰かに行って死ね、とはよう言わん」と、家族の反対を押し切って。

次ページ「命(ぬち)どぅ宝、生きぬけ」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事