渡辺謙、「他人の人生経験は役に立たない」の真意 ドラマ『TOKYO VICE』で見せる新境地

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渡辺謙さんの仕事の”流儀”とは?(写真:梅谷秀司)
何作ものハリウッド映画に出演してきた日本が誇る名優、渡辺謙さん。
「まずはお仕事に対する考え方をおうかがいしたいのですが」と切り出すと、笑顔で「いいですよ、何でも聞いてください」と、場を和ませてくれたうえでインタビューが始まった。
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同じチャンスが巡ってくることはありえない

――渡辺さんが俳優として、「好きを仕事」にするために続けてきたことはありますか。読者の参考になればと思うのですが。

僕の経験はみなさんの参考にはならないと思いますよ。個人的に他人の成功体験は、何の参考にもならないと考えています。人生は、自分で切り拓いていくしかありませんから。だから、これを実行したから成功できるというメソッドは存在していないと思っています。

特に、今の世の中はこれだけ混沌としていて、次に何が起きるかわからない。ロシア侵攻が起こったり、コロナ禍になったりする時代に、自分にどんな風が吹いているのかを、感じて読み取るしかないと思うんです。そこに、他人の成功体験は不要なのかな、と。

――たしかに(何度も頷く)。

そんなに何度も深く頷かなくても(笑)。たとえば俳優業に関して言うと、どの俳優にも同じチャンスが巡ってくることはありえないわけです。だったら、チャンスがどこに潜んでいるのか、チャンスをつかむためにはどうしたらいいのかは、自分で考えるしかありません。

ある意味チャンスは、「株」と同じかもしれません。「今この株が買い時ですよ!」と勧められても、その時点ではすでに、売り時になっていることが多々あるじゃないですか。誰の言うことも聞くなとは言いませんが、自分の感覚を研ぎ澄ませて、自分を導いてくれるものを見極める目を持ったほうがいいかと。

僕自身は、感覚を研ぎ澄ませるようなことは何もしていませんが(笑)。ただ、風を読むことはできます。風とは、いま流行っているものが何かということではありません。いま社会はどこへ向かっているのだろう、いま社会は何に困窮していて、何に喜びを見出しているのだろうという事象に対して敏感になる、ということです。

僕はエンターテインメント界の人間ですから、「ちょっと早すぎたかな」とか、「ちょっと出遅れたかな」と思うときもあって、出遅れたと感じたら手を出しません。そういう感覚は、つねに持っていたいなと思っています。

次ページ吹いている風にマッチするのであれば、引き受ける
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