遅刻した社員から罰金とるのは問題ですか? 《プロに聞く!人事労務Q&A》

拡大
縮小

さて、遅刻に対しての罰金額は10分につき1,000円ということですが、たとえば、遅刻をした労働者の平均賃金を仮に10,000円とします。そして、その日について1時間(60分)の遅刻であったとしますと、制裁分のみの減給額として実際に6,000円{1,000円×(10分×6)}を減給することになりますが、そのまま罰金として6,000円を減額してしまうと、労働基準法に抵触する(平均賃金の1日分の半額(=5,000円)を超える)ことになります。

 よって、御社の場合、遅刻による罰金制度を設ける場合には、当該労働基準法の規定に抵触しないような内容にして、就業規則(賃金規程等)でその旨を規定し、運用しなければなりません。

 なお、遅刻1時間相当分の控除額と制裁としての減給額を合算して、給料から控除することは差し支えありません。

 御社は運送業であり、「時間の正確さが命」という考え方を持って企業として労務管理方針を打ち出しているのですから、遅刻に対する罰金制度の導入はある程度の合理性があるものと判断されます。しかしながら、「10分につき1,000円」という罰金(制裁)の金額については、労働者から高額であるとの不満が出ているということもありますので、この金額について合理性が認められるか、社会通念上どうであろうかという観点で、労働者から意見を聴くことや協議をすることも踏まえて、再考する余地があるのではないかと考えます。また、罰金や減給という制裁以外の方法で遅刻をなくしたり、少なくする方法がないだろうかということについて知恵をめぐらすことも一考でしょう。

半沢公一(はんざわ・こういち)
1980年東洋大学経済学部卒業。IT関連会社で営業、人事労務及び派遣実務に従事した後、91年に独立し半沢社会保険労務士事務所を開設。就業規則をベースとした労務相談を得意とする。企業や団体での講演・講義も多い。現在、東京労働局紛争調整委員会あっせん委員、東京都社会保険労務士会理事等を務めている。著書多数。

(東洋経済HRオンライン編集部)

人事・労務が企業を変える 東洋経済HRオンライン
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT