鎌倉はその穏やかな地域性と利便性の良さから、東京からの“移住者”も多い地域である。セカウンドハウスとしてこの地に住居を購入する富裕層も多く、関東圏でも有数の人気が高いエリアとしても知られる。
この街の玄関口である鎌倉駅には、東口と西口にタクシー乗り場がある。大仏や寺社仏閣など観光名所が集まる東口にはおよそ30台程度のタクシーが待機していた。
東口で拾った藤沢市から通勤しているという歴10年のベテランドライバーは、こんなことを話していた。
「少し前までは飲食店が21時に閉まったからキツかったね。テレワークの影響か、東京に通う会社員の利用も目に見えて減っていた。鎌倉は流しがなく、駅利用か配車だから、いいときは自然と売り上げが上がる。でも悪いときはどんなに頑張っても厳しい。
それでも藤沢でドライバーやるよりはずいぶんいいよ。とにかく客層がいいから、トラブルもおきない。みんなお金があるからか、ギスギスしてないから。しいていえば運転マナーに関してはかなり厳しい地域ということくらいかな。そういった面でのストレスがないのは大きい。今は食べていけるくらいには稼げているかな」
まったく違う畑からタクシー会社を立ち上げた人も
一方、東口よりも多くの住宅街がある西口は、乗り場は小さいながらも、立ち代わり車両が移り変わっていく。
そんな西口には新規参入してきた企業もある。
「鎌倉スマイルタクシー」は、小泉政権時代の規制緩和を受けて2007年に創業している。代表の恒次利明さんも、もともとは国家試験予備校の講師とまったく違う畑だったが、50歳を超えてから突然タクシー会社を立ち上げたのだ。全国的にもきわめて新規参入が少ない業界ではあるが、恒次さんは「鎌倉という商圏だから行動に移せた」と回顧する。
「タクシー会社の経営を考えたとき、非常にわかりやすい業種でもあるということはすぐに見えてきた。それは台数辺りの人口比率や利用率といった商圏の重要性です。それで神奈川周辺の駅で自分の目で調査をしたところ、『鎌倉ならチャンスはある』と判断しました。
駅からでも利用は短距離での移動が多いのですが、とにかく乗車回数の多さが目についた。もちろん苦労した面もたくさんありましたが、あのときの感覚は今でも間違ってなかったと思いますね」
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