国勢調査によれば、鎌倉市の人口は約17万2000人(6月1日時点)。個人タクシーの営業許可が下りる「人口おおむね30万人以上」にも該当せず、決して大都市というわけではない。
高齢者の人口比率が極めて高いという特徴もある。2021年1月時点で、60代以上の人口は約6万3000人を数える。50代以上も加えると約9万人と、人口の半数以上を50代が占めるという地域でもあるのだ。
創業70年、鎌倉エリアを主軸に4つのタクシー会社を運営する「KGグループ」の代表、大崎厚郎さんはその地域性をこう表現する。
「観光客も多いエリアですが、地元の方の利用が約8割を占めます。特徴的なことは2つ。1つは狭い道が多いため、バスなどでアクセスしにくい場所も多く、タクシーの日常使いがかなり多いことです。
隔日勤務の平均でみても、(乗車回数が)40には届かなくても30後半は出ています。乗車あたりの平均単価が1500円程度なので、とにかく回数を刻むスタイルでもある。利用者される方も、やはりご高齢の方の短距離移動が占める割合が多いですね。
もう1つ、ほかの地域との違いは、朝乗せた方を夕方も乗せるということがザラにあることでしょうか。ドア・ツー・ドアサービスが基本ですし、そもそも求められるサービスの質も非常に高い」
KGグループは、鎌倉だけで60台(休業分を除く)の稼働をしており、地域でも最大規模のタクシーを展開している。従業員の出身地について聞くと、やはり「遠方の方も多い」という。
小田原や横須賀から通うドライバーもいる
神奈川では、横浜、川崎と並び鎌倉も営業収入が高いエリアといわれている。タクシー協会の関係者は「近年では営業収入の平均でも、横浜や川崎寄りの大都市圏よりも鎌倉が数千円上回るという状況が多い」と言う。そんな背景もあり、県内から鎌倉に通勤するドライバーも散見されるのだ。
「実際に鎌倉出身や鎌倉に住んでいる、という乗務員さんはほとんどいません。藤沢や逗子、横浜市内から働きに来ている方が多い。遠い方では小田原や横須賀からわざわざ通っている人もいるくらいです。鎌倉が好きでこの街で働きたい、という方もいますし、やはり稼げる場所で働きたい、という人もいますね。
いまだに配車アプリもほとんど浸透しておらず、ほとんど迎車や付け待ちで売り上げがたつ。本音をいえば、この地域でタクシーをやっていてよかったと思ったことは一度や二度ではありません」(大崎氏)
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