フランス企業で「上下関係が露骨になった」事情 コロナ禍で働き方がフレキシブルになった一方

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くみ : フランスのコロナ専用アプリを開く機会もすっかり減ったけれど、まだパリだけで数千人という陽性者数を毎日発表している状況に変わりはなく、冷暖房の好き嫌いにかかわらず窓を開けておきたい人がいるのは当然よね。エコの観点からはあまりよくないかもしれないけれど……。

社員同士のコミュニケ―ションにも変化

エマニュエル : 社員同士のコミュニケーションの仕方も変わったところがあって、メール、電話、または直接会って要件や仕事の話をするのがコロナ前だった。それが今は、オフィスに電話が鳴り響くことはほとんどないし、直接会って要件を伝えることも少なくなった。

どうしてかというと、ロックダウン中にメールでの多すぎるやり取りを軽減する目的として、インスタントメッセンジャーの利用が一般化したからだ。電話の代わりに、Teamsなどのチャットで要件を伝える。ロックダウン中は家庭が仕事場であったこともあり、社員の私生活の妨げにならないよう、電話をかけることはあまりに押しつけがましい行為として避けるようになった。

チャットでのコミュニケーションが広まったことで、会社に出勤している際でも、簡単な要件などであれば直接会って話すより、チャットを使って伝えるので、コロナ以前と比べると社員同士の直接のコミュニケーションは少なくなったね。

くみ : さっきの話のようにオフィスにいる時間や勤務時間がよりフレキシブルになったら、相手が今どんな状況なのか見えにくいしね。もしかしたら相手は休暇中かもしれないし。ビジネス用の携帯電話を持っている人もいるけれど、チャットとかに慣れてしまうと、前触れもなく突然電話をかけるのはちょっと暴力的とすら感じることもあるね。

エマニュエル : とはいっても、徐々にコロナ以前の生活に戻ってきてはいるけれど、ちょうど現在フランスは感染者数もまた上昇し始めて、完全に以前の生活に戻るのにブレーキがかかってしまう。このコロナ以前と以後の生活を行ったり来たりする生活は、あと数年は続きそうだね。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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