重度障害のある子どもが地域の学校への就学を希望する場合は、役所が開く「就学相談」の機会より、もっと早い時期から準備したほうがいい。すべての地域で前例があるわけではないため、教育委員会や就学先の学校で準備が必要になるからだ。涼緒奈さんの場合は4歳のときから、耳原小校長と就学相談を始めた。
母親の智代さん(35)は、長女の涼愛(りあ)さん(9)が近所の同年代の子どもたちと保育所などで楽しく遊ぶ様子を見て、次女の涼緒奈さんにも「そんな環境を作ってあげられたら」と考えた。
校内にエレベーターやスロープを設置
そこでまず、夏休み中、涼緒奈さんと同校を見学した。だが、車いすの子どもが就学した前例がなかったため、校舎全体がバリアフリーになっておらず、涼緒奈さんが座るバギーでは移動できなかった。
その日、校長との面談で智代さんは、学校は災害時の避難場所でもあることを例に挙げながら「娘のような障害児が就学することでエレベーターやスロープが設置されれば、地域住民の誰もが安心していられる場所になります」と伝えた。
翌年の就学に関する会議では、特別支援学校の教育課程が必要ではないかと意見が出た。だが、藤井さんご夫妻と涼緒奈さんが耳原小への就学を希望したことから、茨木市教育委員会と同校は希望を受け入れ、校内にエレベーターやスロープを設置するなど、可能な限りの予算措置による環境整備と合理的配慮に対応した。
このほか、学校看護師が医療的ケアをしたり、介助員がオムツ交換などの介助をしたりするときのために、特別支援学級の教室を改良して休憩室を確保し、リクライニング機能のあるベッドを置いた。この部屋には、涼愛さんやクラスメートも遊びに来る。
涼緒奈さんは、給食も通常学級で取っている。智代さんが学校に来て給食をミキサーにかけたり、ミキサー食を保温ジャーに入れて持たせたりして、給食の時間に学校看護師が胃ろうに注入する。
そんな涼緒奈さんが学校で学ぶためには「ICT(Information and Communication Technology)」と、「AT(Assistive Technology:障害を支援する技術。例えば、車いす、白杖、音声入力や視線入力など)」の活用が欠かせない。これらは障害のある子どもの可能性を最大限に引き出すからだ(連載第3回参照)。
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