一般的に、医療・福祉と学校の関係者間のつながりは乏しい。そのため、いつも親が旗を振らなければならず、「親のエゴ」と誤解を受けることもある。そんなとき、地域を巻き込んだ支援の輪があれば……。
「一度、みんなが顔合わせをしておけば、親や相談員が走り回らなくても、お互い必要なタイミングで連絡を取り合うことができます。親がいなくても、娘が地域で生きていけるような環境作りこそ、親の役割と考えています」と智代さんは言う。
智代さんからの提案を受けて茨木市教委は、重度障害のある子どもの学校生活をチーム制でサポートする方法を取り入れた。関係者間では「茨木市モデル」と呼ばれている。研修会当日、支援者らは「チーム・かえで」「チーム・りおな」の結成に意欲的だった。智代さんによると、その後、チーム内のやり取りが思った以上にスムーズになったと喜んでいる。
クラスの友だちとの温かい結びつき
耳原小校長の宮城龍一さん(53)はこう話す。
「涼緒奈さんが同じクラスのお友だちと一緒にいるときの表情や様子を拝見していると、温かい結びつきを感じます。教職員や支援者も非常に熱心に、いろいろな工夫をしながら取り組まれ、感謝しています。茨木市のように行政の経済的な支援があり、本校には意欲的な教職員がいたので、医療的ケア児の受け入れができていると考えます」
文科省は「学校看護師(養護教諭とは別に、医療的ケアが必要な子どものケアを専門にする看護師)」の配置、特別支援教育が必要な子どもを支援者とつなげる「特別支援教育コーディネーター」の養成に予算を計上しているが、まだ全国には広がっていない。
涼緒奈さんや楓さんは周囲から支援を受けながら、学校生活を送っている。だが、それだけでなく2人は障害という特性によって、地域の環境や文化を変えるという役割を果たしている。
*文部科学省,令和元年度 学校における医療的ケアに関する実態調査,幼稚園、小・中・高等学校に在籍する医療的ケア児等の推移(2019年度は幼稚園・高等学校における医療的ケア児の人数も含まれているため、本稿では2018年度の数字を記載した)
参考:Sam's e-AT Lab(本文中の福島勇さんのブログ)障害による困難さのある子どもたちの学習や生活を豊かにするための電子情報通信技術による支援技術に関する話題を読むことができる。
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