医療的ケア児を受け入れた地域の学校が行った事 2年前から始めた就学相談、ICTの活用で支援も

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文科省の「GIGAスクール構想」では、障害の有無にかかわらず、今後、授業でICTを活用することが求められ、2023年度までに全国の小中学生に1人1台の端末の配布と、学校に高速大容量通信ネットワークの整備を進めている。だが、障害のある子どもの授業でATを使いこなせる教員は、全国的に多くない。

そこで、智代さんが代表理事を務める一般社団法人できわかクリエイターズ(連載3回目登場)は、涼緒奈さんの通う耳原小を含む2つの小学校で「重度障害児の遊び・学びをひろげるデジタルツール活用支援研修会」という企画を立て、茨木市が公募する「チャレンジいばらき補助金(茨木市提案公募型公益活動支援事業)」に応募した。

この企画は採用され、研修会では、講師として国立高専機構熊本高等専門学校特命教授の福島勇さん(61)を招いた。福島さんは福岡県の特別支援学校で、1990年代からICTとATを用いて障害のある子どもを指導してきた。

研修会では、福島さんが授業を視察し、ICT活用に苦労する参加者からの質問に、ATを用いる観点からの助言や指導をした。当日は、日頃から涼緒奈さんらを支援する医療・福祉・学校・行政の関係者が集まったほか、市議会議員も見学に来た。

耳原小では、涼緒奈さんが通常学級の授業などに参加できる方法を、特別支援学級の教員が模索していた。そこで、福島さんは「涼緒奈さんがクラスメートに伝えたい内容を、教員がパワーポイントで作成し、クラスメートの音声も入力しておくといいですよ」と指導した。

これで、涼緒奈さんがスイッチに触れると、パワーポイントから朝の会の司会用のセリフ「これから、朝の会を始めます」などを友だちの音声で出力できるようになった。

小学5年生の楓さんのケース

もう1つの同市立太田小学校(以下、太田小)では、小学5年生で特別支援学級に在籍する富永楓(かえで)さん(10)の授業を、福島さんが視察し、指導した。楓さんは難病のミトコンドリア脳筋症のため、生活のすべてで介助を受けている。4歳から人工呼吸器を装着しているので、声を出せない。そのため、目の前に並べられた2枚の絵やものを指差して、周囲とコミュニケーションを取ってきた。

太田小特別支援学級の教員は、楓さんの授業中の指導について「文科省から配布されたタブレットに、ATの1つのVOCA(Voice Output Communication Aids:音声によるコミュニケーションツール)をダウンロードして使いたいが、どんなアプリを使えばいいかわからない」「教員が手を添えないと、楓さんがタブレット画面をうまくタップできない」という2つの課題を抱えていた。

タブレットに音声(VOCA)アプリを入れると、子どもの学習意欲が上がる。楓さんは国語が好き(写真:著者撮影)
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