田中聖さん再逮捕に見る薬物に刑罰が間違いな訳 再使用は治療失敗ではなく、治療を深める好機
いったんこのような状態になってしまうと、薬物を思い出すような刺激に遭遇したとき、過敏になっている報酬系はたちまち興奮し、薬物を求めてやまない状態になってしまう。
慢性の薬物使用者は、生活のありとあらゆる場面で薬物を使っているため、薬物を思い出させるような刺激はあちこちに潜んでいる。それは薬物仲間だったり、売人からの電話であったり、あるいは繁華街のネオンサインだったりする。
さらに、疲れたときや落ち込んだとき、ストレスのあるときなどに、そうした気持ちを紛らわせようと薬物を使うことが日常的になっているため、このようなネガティブ感情を抱いたときには、すぐに報酬系にスイッチが入り、薬物欲求が生まれてしまう。
薬物を求める力に理性では太刀打ちできない
このようになると、もはや理性や意志の力ではどうしようもない。理性や意志の力は、大脳皮質の前頭前野にその座があるが、報酬系は脳のもっと深いところの大脳辺縁系に源がある。それが薬物を求める力は、まさに本能的なものであり、理性では太刀打ちできないのである。
どうして反省していたのに使ってしまったのか、家族や仕事のことは考えなかったのか、刑務所は怖くなかったのか、などと周りの人は不思議に思うだろうが、それは本人も同じである。心から反省をし、迷惑をかけた家族を大事にしようと心の底から思っていても、そして刑務所だけは入りたくないと思っていても、いったんスイッチが入ったら最後、報酬系はものすごい力で暴走し、薬物を求めてしまうのだ。
薬物は再犯率が高いことで知られている。覚醒剤取締法違反で検挙された人の同種事犯再犯率は約67%であり、これはほかのどの事件よりも高い。その理由は、ここまで説明したことで、ある程度理解していただけたと思う。
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